基礎知識

「愛着障害」とは何か?|愛着障害とはどんな状態を指し、どのように治療や克服をするのか?

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この記事では「愛着障害」とは何か解説する。愛着障害の複数の定義のそれぞれの意味、愛着障害の治療・克服方法、社会的な取り扱いを解説する。

愛着障害の定義

愛着障害というと、複数の意味合いがある。疾病分類や医療現場で扱われる際のもの、社会一般で言われる際にさすものがある。

「愛着スペクトラム障害」という捉え方

まず社会一般で言われる愛着障害と言われる際には、「不安定な愛着が原因となり、対人関係やその他生き方に様々な問題が生じる状態」をいう。愛着スペクトラム障害などとも言われる。スペクトラムとは連続体という意味を持つ。当記事では以下さまざまな愛着障害の定義を解説するが、「このラインを超えていると愛着障害だ」などと決められる線引きはなく、症状には強弱があるということをスペクトラムという言葉に含まれている。

こうした不安定型愛着に伴って支障を来している状態を、狭い意味での愛着障害、つまり虐待や親の養育放棄による「反応性愛着障害」と区別して、本書では単に「愛着障害」と記すことにしたい。このような広い意味での「愛着障害」は、筆者が既に提起した「愛着スペクトラム障害」と同義である。
(引用 : 『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』岡田 尊司 光文社新書 初版)

人が愛着に関する問題を抱えることはある。それを愛着障害ということができるし、「愛着障害とはこんな物だ」という共通認識は社会で広まっている。しかし、その共通認識の愛着障害は誰もが認める権威性ある機関が決めているものではない。その権威性ある機関とは、WHO(世界保健機関)やアメリカ精神医学会だ。

小児期の反応性愛着障害・脱抑制性愛着障害

WHO(世界保健機関)はICD、アメリカ精神医学会はDSMと疾病や精神疾患の分類をつくっている。
そのICDとは…

「疫病及び関連保険問題の国際統計分類 : International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems(以下「ICD」と略)とは、異なる国や地域から、異なる時点で集計された死亡や疫病のデータの体系的な記録、分析、解釈及び比較を行うため、世界保健機関憲章に基づき、世界保健機関(WHO)が作成した分類である。(改段落)我が国では、統計法(平成19年法律第53号。以下「法」という。)第28条第1項の規定に基づき、法第2条第9項に規定する統計基準として、ICDに準拠した「疫病、傷害及び死因の統計分類」を告示している。現在、国内で使用している分類は、ICD-10(2013年版)に準拠しており、統計法基づく統計調査に使用されるほか、医学的分類として医療機関における診療録の管理等に活用されている。
(引用 : 『「疫病、傷害及び死因の統計分類」|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/toukei/sippei/)』(2021/08/24 17:29時点の名称・URL))

だ。
次にDSMとは…

DSMとは、アメリカ精神医学会が出版している、精神疾患の診断基準診断分類です。正式名称は「精神疾患の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manuual of Mental Disorders)」といい、その頭文字を略してDSMと呼びます。(改段落)DSMは、精神医学の研究や治療を行っている人に、精神疾患の基本的な定義などを示したものです。もともとはアメリカで作られたものですが、現在は国際的に利用されていて、日本でも精神疾患の診断に用いられています。
(引用 : 『DSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル第5版)とは?主な内容、診断基準としての使われ方、診断後に受けられる治療・支援を解説します|LITALICO仕事ナビ(https://snabi.jp/article/127)』(2021/08/24 17:29時点の名称・URL))

だ。

その分類では愛着障害以下のように定義されている。

・「ICD-10では…F94.1(小児<児童>期の反応性愛着障害),F94.2(小児<児童>期の脱抑制性愛着障害)」
(※まだ日本適用がされていないICD-11では…6B44(Reactive attachment disorder)、6B45(Disinhibited social engagement disorder))

・「DSM-Ⅳでは…313.89 幼児期または小児期早期の反応性愛着障害」(※Ⅳはアラビア数字で4で、DSM-Ⅳは旧バージョンのDSM)

・「DSM-5では…反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害・脱抑制型対人交流障害」

「反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害」とは?

A.反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害
1.病態の把握
アタッチメントとは、つまり人や動物などに対する情緒的な結びつき、愛着を指す。幼少期に虐待を受けるなどして養育者との間で十分な安心感を得られず育ち、アタッチメント形成に問題が生じ、幸福な満足といった陽性の感情がほとんど見られなくなる状態である。
(引用 : 『精神科レジデントハンドブック第3版』平安良雄 編集 中外医学社)
B.脱抑制型対人交流障害
1.病態の把握
反応性アタッチメント障害と同じく幼少期のアタッチメント形成に問題があり、見慣れない大人への距離の極端な近さが特徴的である。
(引用 : 『精神科レジデントハンドブック第3版』平安良雄 編集 中外医学社)

また、小児期でも反応性愛着障害などの基準にかからない場合でも、大人の愛着障害のよう愛着障害と呼ばれることもある。

このように愛着障害にはたくさんの定義がある。国際的に権威ある疾病分類に則った「子どもの愛着障害」(反応性愛着障害・脱抑制性愛着障害)と「大人の愛着障害」(、また「子どもの愛着障害」)で、「今読んでいる記事の愛着障害はどんな定義だろうか?」と意識する必要がある。

(参考 : 『「疫病、傷害及び死因の統計分類」|厚生労働省([https://www.mhlw.go.jp/toukei/sippei/](https://www.mhlw.go.jp/toukei/sippei/))』(2021/08/24時点の名称・URL))
(参考 : 『DSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル第5版)とは?主な内容、診断基準としての使われ方、診断後に受けられる治療・支援を解説します|LITALICO仕事ナビ([https://snabi.jp/article/127](https://snabi.jp/article/127))』(2021/08/24 17:29時点の名称・URL))
(参考 : 『厚生労働省 : 第3回発達障害者支援に係る検討会の資料について([https://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/03/s0315-3i.html](https://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/03/s0315-3i.html))』(2021/08/25 03:26時点の名称・URL))
(参考 : 『DSM-5 病名・用語翻訳ガイドライン(初版)』日本精神神経学会 精神科病名検討連絡会 精神神経学雑誌 第116巻 第6号(2014)429-457頁。)
(参考 : 『ICD-11(https://icd.who.int/en)』(2021/10/03 01:50時点の名称・URL))

大人の愛着障害

愛着システムは生涯ものだとボウルビィは言っている。

・Bowlby(1973, 1980, 1982)は自らの考えを、人の揺かごから墓場までのパーソナリティの生涯発達を理解するための総合理論であると言明していた。彼の中核的な関心は、生涯を通して人が特定の他者に身体的・情緒的にくっつきうる(attach)ということの発達的・適応的な意味と、また、そうした安心感の源たる関係性を喪失したときの人の心身全般にわたる脆弱性とに注がれていたのだといえる。
(引用 : 『アタッチメント理論の現在―生涯発達と臨床実践の視座からその行方を占うー』遠藤利彦 東京大学大学院教育学研究科 教育心理学年報 第49集)

ではなぜ成人アタッチメントがあるのか? というか、どんな役割があるのか? それは種の存続だ。乳児は世話をしてもらわなければならないが、そのような仕組みなしに乳児の世話をするだろうか。

その成人期にアタッチメント(成人アタッチメント)が果たす役割はこの3つだ。

・関係性としてのアタッチメント
・情報処理過程としてのアタッチメント
・自分とわが子を守る方略としてのアタッチメント
(引用 : 『成人アタッチメントのアセスメント-動的-成熟モデルによる談話分析-』著者:パトリシア・M・クリテンデン、アンドレア・ランディーニ 監訳者:三上 謙一 岩崎学術出版社 初版)

これを言い直すと、

・関係性としてのアタッチメント→「対人関係の判断・行動基準としての役割」

・情報処理過程としてのアタッチメント→「情報の判断・行動基準としての役割」

・自分とわが子を守る方略としてのアタッチメント→「自身や子を保護の判断・行動基準としての役割」

だ。

当記事冒頭でも大人の愛着障害の定義について述べたが、さらに詳細に言うと、この成人アタッチメントが役割を果たした結果「心身の健康に支障が出ている状態・社会的適応に支障が出ている状態」が大人の愛着障害と言われるものだ。

(参考 : 『アタッチメント理論の現在―生涯発達と臨床実践の視座からその行方を占うー』遠藤利彦 東京大学大学院教育学研究科 教育心理学年報 第49集)
(参考 : 『成人アタッチメントのアセスメント-動的-成熟モデルによる談話分析-』著者:パトリシア・M・クリテンデン、アンドレア・ランディーニ 監訳者:三上 謙一 岩崎学術出版社 初版)

なぜ子どもの時に愛着障害が大人の愛着障害になるのか?

小児期の反応性愛着障害と大人の愛着障害について以下の研究成果もある。

一方で、DSM-5基準を満たしたRAD(*1)児21人の脳皮質容積を調べてみたが、定型発達児22人に比べて、左半球の一次視覚野(ブロードマン17野)の容積が20.6%減少していた(図3A)(Shimada et al., 2015)。その視覚野の容積現象は、RAD児が呈する過度の不安や恐怖、心身症状、抑うつなど、「子どもの強さと困難さアンケート」の内向的尺度と明らかに関連していた(図3B)。前述したように子ども時代に虐待を受けた成人は視野覚の灰白質容積減少(Tomoda et al., 2009a; Tomoda et al., 2012)があり、しかもそれらの成人では後頭から側頭領域を結ぶ下縦束(Inferior longitudinal fasciculus : visual limbic pathwayの一部) の白質線維が減少していた(Choi et al., 2012)。視覚野は視覚的な感情処理に関連する領域である。
(引用 : 『マルトリートメントに起因する愛着形成障害の脳科学的知見』友田明美 予防精神医学 Vol.2(1)2017)
(*1)RAD=Reactive Attachment Disorder(反応性愛着障害)(記事執筆者追加)

また、精神療法家ベッセル・ヴァン・デア・コーク(有名著書 : 『身体はトラウマを記録する』)は、感情制御機能の問題が大人の愛着障害への推移に関わっていると主張している。

特に、反応性愛着障害(Reactive Attachment Disorder : RAD)や脱抑制型社交障害(Disinhibited Social Engagement Disorder : DSED)は、感情制御機能に問題を抱えており、多動性行動障害、解離性障害、大うつ病性障害、境界性パーソナリティ障害等などの重篤な精神疾患へ推移するとされる(van der Kolk, 2003)。
(引用 : 『マルトリートメントに起因する愛着形成障害の脳科学的知見』友田明美 予防精神医学 Vol.2(1)2017)
(参考 : 『子育て困難を支援する”愛着障害の診断法と治療薬”の開発〜発達障害や愛着障害の脳科学的研究〜』友田明美 YAKUGAKU ZASSHI 136(5) 711-714(2016))
(参考 : 『マルトリートメントに起因する愛着形成障害の脳科学的知見』友田明美 予防精神医学 Vol.2(1)2017)

愛着障害の治療・克服

「反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害」の治療や克服

・子どもの養育背景を十分に評価した上で、安全な環境下で養育者との安定した関係を築いていくことが重要となる。関係機関と連携をとりながら支援を整える、環境調整を行う。
(引用 : 『精神科レジデントハンドブック第3版』平安良雄 編集 中外医学社)

「脱抑制型対人交流障害」の治療

・反応性アタッチメント障害と同様、子どもの養育背景を十分に評価した上で、安全な環境下で養育者との安定した関係を築いていくことや、関係機関と連携を取りながら支援を整える。環境調整を行うことが重要である。
(引用 : 『精神科レジデントハンドブック第3版』平安良雄 編集 中外医学社)

反応性愛着障害(DSM-Ⅳ)の治療薬

反応性愛着障害(DSM-Ⅳ)の治療薬の研究も進んでいる。オキシトシンを有効成分として含有し、長期投与時の安全や服用の簡便さが目指されている。
(参考 : 『J-STORE(~愛着障害治療剤 友田 明美 特願2013-264454~)(https://jstore.jst.go.jp/nationalPatentDetail.html?pat_id=34216)』(2021/10/07 15:35時点の名称・URL))

愛着スペクトラム障害の克服

愛着障害の克服は、安全基地を見つけることから始まる。安全基地とともに、自分の過去の傷を見直していく。過去から現在まで続く傷を乗り越えることで、対人関係や生き方の課題・困難といった悪循環を解決していく。以下の記事で詳しく解説している。

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社会で愛着障害がどのように扱われてきたか?

「愛着障害」がいつから(日本)社会で話題になるようになったのか?

ニュース記事と出版履歴をみるに、2015年よりニュース記事にて話題の盛り上がりを確認。

「ニュース記事での登場回数」
Googleニュースにて「愛着障害」と2010/01/01からの検索結果から愛着理論に関する記事を調査した(一部、タイトル・概要で主観判定だが)。

(計195件)※2021年8月時点
2011年…1件
2012年…3件
2013年…1件
2014年…4件
2015年…17件
2016年…24件
2017年…24件
2018年…43件
2019年…26件
2020年…52件

「出版履歴」
国立国会図書館(NDLサーチ)での本(+児童書)出版年ごと検索にて調査した。以下が検索条件だ。

(計14件)※2021年8月時点
2020年…1件
2011年…2件
2012年…1件
2013年…1件
2014年…0件
2015年…2件
2016年…2件
2017年…0件
2018年…2件
2019年…1件
2020年…2件

2015年よりニュース記事にて話題の盛り上がりを確認できた。調査した上でのあくまで所感だが、ニュース記事が盛り上がった影響は岡田尊司氏の書籍が大きな一因になっていると感じた。「「『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』岡田 尊司 光文社新書」を参考にしている書籍が一定数あるなぁ」という印象は抱いた(※執筆者自身が最初に愛着障害に触れたのがこの書籍だという点は考慮すべきかもしれないが)。

行政機関での取り扱い

文部科学省や厚生労働省と言った行政機関が(分科会の資料などの資料は除き、あくまで各省が書いているコンテンツ内に)ウェブサイトに公開している資料において、「愛着」は基本的に「乳幼児期の愛着形成の重要性」、「反応性・脱抑制性愛着障害」の2点での言及のみとなる。定義からもわかるように愛着障害は「反応性愛着障害・脱抑制性愛着障害」しか国際的に権威ある疾病分類に則っていないからだ。

医療現場での取り扱い

医療現場では、「小児期の反応性愛着障害・脱抑制性愛着障害(またはDSM-5基準で)」(その他の子どもの愛着障害としての言及もあり)・「大人の愛着障害」が取り扱われている。

子どもの愛着障害(愛着スペクトラム障害に含まれる)の話題では「乳幼児期の愛着形成の重要性」、「反応性・脱抑制性愛着障害」が主に言及されている。

大人の愛着障害(愛着スペクトラム障害に含まれる)は話題では、まとめると「子ども時代に安定した愛着が築けなかったことが原因で、対人関係やその他生きていく上での課題に問題が生じている状況」が主に言及されている。

まとめ

「この記事のまとめ」

・国際的に権威ある疾病分類に則った「反応性愛着障害・脱抑制性愛着障害」と「(その他の子どもの愛着障害含む)大人の愛着障害」がある。よって、国際的に権威ある疾病分類に則った愛着障害(反応性愛着障害・脱抑制性愛着障害)と「愛着スペクトラム障害」、「今読んでいる記事の愛着障害はどんな定義だろうか?」と意識する必要がある。

・大人の愛着障害(愛着スペクトラム障害に含まれる)とは、成人アタッチメントが役割を果たした結果「心身の健康に支障が出ている状態・社会的適応に支障が出ている状態」が大人の愛着障害と言われるものだ。

・愛着障害の克服には安全基地をもつことが必要だ。

・愛着障害は「愛着スペクトラム障害」が大きく取り扱われることでこの社会で盛り上がってきた。

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