職場と安全基地

社員に安心感を与えられない会社は存続できない|ビジネスでの「三つの安全基地」の価値ここに極まれり

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企業は「企業の生存環境が素早く変わる中より生産性を高める人事、安全配慮義務としてのメンタルヘルスの拡充」に苦労している。従業員は「安心して働ける環境で活躍できること」を求めている。企業は従業員が過度の負担を負うことなく、かつ、高いパフォーマンスを発揮してもらう必要がある。それを実現するため、「企業は従業員の三つの安全基地になるべきだ」と主張する。以下、「そもそも安全基地とは何か、三つの安全基地とは何か、三つの安全基地が必要なわけ、人材マネジメントへの導入方法」を解説する。

目次

労働者をめぐるメンタルヘルスの現状は?

労働者のメンタル不調は発揮できる能力を低下させる。少なくともそのメンタル不調を職場が原因で起こすことは防ぎたい。その労働者のストレスの要因は以下となっている。

・ところで、従業員はどのようなことにストレスを感じるのでしょうか。「労働者健康状況調査」(厚生労働省)2012年データでは、「仕事の質」「仕事の量」など職務に起因するものや、「職場の人間関係」といった職場集団に関連するもののほかに、「会社の将来性」(22.8%)や「雇用の安定性」(15.5%)などもストレス要因となっていることが分かります(第1省1節❶参照)。
(引用 : 『メンタルヘルス・マネジメント®︎検定試験公式テキスト〔第4版〕[Ⅰ種 マスターコース]』編者:大阪商工会議所 発行者:山本継 発行所:(株)中央経済社)

職務、職場集団、会社のゴーイングコンサーンや雇用の安定性、のようなこれらがメンタルヘルス不調をもたらすことを防ぎたい。

また、キャリア発達の躓きがメンタルヘルスの不調につながることもある。以下で説明するが、メンタルヘルスケアとキャリア発達支援を連動させる必要がある。

「三つの安全基地」が企業経営に与える影響の意義

よりよい職務・職場集団 を目指す

労働者のストレスを避けるには「働きやすさ」が必要だといえる。「三つの安全基地」は労働者が心理的安心感を得ながら働けるという点で「働きやすさ」をもたらす。

会社のゴーイングコンサーンや雇用の安定性向上を目指す

生産性向上・メンタルヘルスケア・社会との調和の三つを得なければ企業の長期的な成長は得られない。また、安全配慮義務やそれを有効なものにするための実施義務事項がある。そこで愛着こうは「三つの安全基地」を新しいソリューションとして提案している。「『セキュアベース・リーダーシップ』著者:ジョージ・コーリーザー、スーザン・ゴールズワージー、ダンカン・クーム 訳者:東方 邪美 プレジデント社 初版」では「人の心を大事にしないと長期的な成功は得られない。先に人の心が壊れる。メンタルヘルスの現状を見るとわかる。」とされている。成果を得られるよりも、先に人が倒れる。「働くのはカネのため」のように結局カネだと口では言いつつも、安全基地くらいはないと高い生産性は出せない。最低限の安心感があって初めてカネのために頑張れるのだ。本当に金稼ぎを頑張りたいなら安全基地がいる。

そういうこともあり、日本ではストレスチェック義務化制度の実施後、多くの企業でメンタルヘルスケア制度が拡充されてきた。これらは従業員の健康と生産性の二つを追い求めるものだが、「三つの安全基地」はそれをさらに進めるものだ。ストレスチェック制度はメンタルヘルスケアの二時予防(病気の早期発見・早期治療)だが、「三つの安全基地」は一時予防(病気を発生させないこと)を目指すものだ。

そもそも従業員に「三つの安全基地」がない企業に人材は定着しない

「三つの安全基地」についてはきちんと後述するが、「三つの安全基地」がないと、そもそも人材が定着しない。そんな企業が存続することはない。

また、「三つの安全基地」がない企業に今いる人材がいつまで務められるだろうか。書籍『セキュアベース・リーダーシップ』によると、安全基地がない状態でビジネスの結果目標だけを追うと、病気や依存症、うつ、慢性的孤独感に苦しむかもしれないとされている。そうなれば人材の損失となる。損失リスクを負った上に安全基地がないという評判をもらうリスクまで負うことは、「期待できるビジネスの結果」と天秤に図ってでも選ぶ価値があるだろうか?

・セキュアベースとして目標しか持っていない人は、「一匹オオカミ」と呼ばれる、次の話に登場するパスカルのように、人との絆を欠いている場合、病気、依存症やうつ、慢性的孤独感に苦しむかもしれない。
(引用 : 『セキュアベース・リーダーシップ』著者:ジョージ・コーリーザー、スーザン・ゴールズワージー、ダンカン・クーム 訳者:東方 邪美 プレジデント社 初版)

「三つの安全基地」は人材マネジメント実務の労働環境改善にて役立つ

以下の点で人材マネジメント実務の労働環境改善にて役立つ。

・人材発掘
・人材流出の阻止・人材の収集(採用・離職)
・悪い情報の流れをよくする

人材発掘

従業員に配置などの希望を聞くのはいいが、本人にとってこれが苦手そうだというのは聞き出しにくい。そこで、「言いにくい・話しにくい」をなくし、特にマイナスの希望(「これはしたくない」や「これは苦手」)を話してもらいやすくする。

人材流出の阻止・人材の収集(採用・離職)

メンタルヘルスケアにより、人材の価値毀損を防げる。

また、安心感を持ち働けるという魅力になる。

悪い情報の流れをよくする

社員が安心感を持ちながらリスクへの挑戦をできるようにし、上司への悪い情報の流れがよくする。悪い情報なんていうものを上司に言って、何言われるかわからなければ、別に言わなくてもいいなら報告しようとしなくなるだろう。

「三つの安全基地」とは何か?

「安全基地」とは

安全基地とは愛着理論の用語である。愛着理論は、

愛着理論は、「すべての人は生まれながらにして、親密さと安心を得ようとする欲求を持っており、自分を守ってくれると感じられる人からそれを得ようとする」という前提のもとに展開される理論である。
(引用 : 『セキュアベース・リーダーシップ』著者:ジョージ・コーリーザー、スーザン・ゴールズワージー、ダンカン・クーム 訳者:東方 邪美 プレジデント社 初版)

というものである。その「自分を守ってくれる人」が安全基地である。

「安全基地」は、いざというとき頼ることができ、守ってもらえる居場所であり、そこを安心の拠り所、心の支えとすることのできる存在なのである。

これがなければ、生きる上で安心感を得ることが難しく、様々な困難を抱えやすくなる。

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「愛着」や「愛着スタイル」とは

愛着理論の「愛着」とは特定の人に対する特別な結びつきのことだ。また、人格のもっとも土台の部分を形造っているものである。脳内のホルモン作用がかかわる生理学的な仕組みである。その型として愛着スタイルというものがある。この愛着の型は、対人関係や生き方に課題・困難さをもたらす。愛着の型の一種である「愛着スタイル」について、以下の記事で詳しく解説している。

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不安定な愛着がもたらすもの

不安定な愛着は様々な悩みをもたらす。「HARMの法則」の全てに影響をもたらす。HARMの法則は「人間の悩みのほとんどはHealth(健康)・Ambition(キャリア)・Relationship(人間関係)・Money(お金)に分類できる。」というものだ。以下、参考文献からHARMの法則に沿って症状のまとめである。

「Ambition(キャリア」 →人間関係の問題を職場に持ち込んでしまう(愛着不安が根本)。人生の課題からどうしても逃げてしまう(愛着回避が根本)。
「Relationship(人間関係)」 →密接になる対人関係に不安を持ちやすく、その不安が行動に出ることで対人関係が悪化する傾向がみられる。パートナーが自分をどう評価するかによって、自分自身に対する評価まで変化しやすいという特徴がある。(愛着不安が根本)。 人付き合いを避ける傾向にあり、自分の未来や将来に対する責任を避けがちになる傾向がみられる。恋人やパートナーから助けを求められることが苦手であり、助けに応えるという反応も見られにくい。(愛着回避が根本)。
また、
「Health(健康)」 →他のA・R・Mがもたらすストレスによる身体的不調。
「Money(お金)」 →他のA・R・Hがもたらすストレスや葛藤を解消するため、過剰消費をもたらす。

ビジネスにおける心理学の安全基地

以下の書籍や、米Google(Alphabet)から提唱された心理的安全性など「安全基地」の重要性はさまざまな主体により主張されている。

人との絆のバランスをとることは、職場で役割を果たし、高い自尊感情を持ち、高い業績を挙げるうえでの基盤となる。人、あるいは目標との絆を欠いていると、拒否される恐怖、成功あるいは失敗の恐怖が大きくなり、全力を出し切れなくなってしまう。恐怖による強い無力感から、ストレッチ目標にも手が届かなくなる。セキュアベースは成功の可能性に集中させ、不安感から人々を守り、行動する勇気を起こさせる。
(引用 : 『セキュアベース・リーダーシップ』著者:ジョージ・コーリーザー、スーザン・ゴールズワージー、ダンカン・クーム 訳者:東方 邪美 プレジデント社 初版)

「三つの安全基地」とは?

「三つの安全基地」とは、心理学の安全基地を拡張したものである。「三つの安全基地」の一つである人的安全基地は、心理学の安全基地とほとんど同じものだ。しかし、その安全基地を多くの人が持てていない事実がある。

・安定型の愛着を示すのは、およそ三分の二で、残りの三分の一もの子どもが不安定型愛着を示すのである。
・さらに成人でも、三分の一くらいの人が不安定型の愛着スタイルをもち、対人関係において困難を感じやすかったり、不安やうつなどの精神的な問題を抱えやすくなる。
・ご自身が、不安定型愛着を抱えているかもしれないし、恋人や配偶者や同僚がそうであるかもしれない。カップルのどちらかが不安定型愛着を抱える確率は、何と五〇パーセントを超えるのだ! さらに、三人の人がいて、そのうち一人でも不安定型愛着を抱えている可能性は、七割にも達する! 不安定型愛着がどういうものか知らずに世渡りすることは、片目を眼帯で覆って車を運転するようなものだと言えるだろう。
(引用 : 『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』岡田 尊司 光文社新書 初版)(※2011年発行の書籍)

3人に1人だ。多くの人のこれらの状態をなくすことが好ましい(なくしたくない方、いらっしゃいませんよね)。しかし、そのための人的安全基地(≒心理学の安全基地)になることは簡単ではない。そこで人的安全基地になるための組織的安全基地も提案する。また、人間が社会で生きていくために必要な経済的な安定も「三つの安全基地」に一つに入れている。

人的安全基地

「人的安全基地」は、いざというとき頼ることができ、守ってもらえる居場所であり、そこを安心の拠り所、心の支えとすることのできる存在である。

組織的安全基地

職場に安全基地がないと、生産性の低下、働く人材の健康阻害が発生する。職場を想定している組織的安全基地の担い方は、個人が個人の安全基地となれる文化を持った組織であり、そのための制度が整えられている組織である。

経済的安全基地

「この社会で生きていける」と思えるための最低限の経済的状況が保たれていることが人の幸せにとって大きなファクターを占めていると考えている。例えば「私一人分の経済的安全基地しかない」だったり、「長期的な夫婦と子ども達分の経済的安全基地がある」と。このような経済面で安全基地のようなものがないと、人口の再生産率を下げる。

以上を持って、経済的安全基地の担い方は、人のフローとストックを充実させることとしている。

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なぜ、ビジネス現場に「三つの安全基地」を導入すべきか?

安全基地がない例

安全基地を持たない方にとって、安全基地を理解することはできても、大事だと感じることは難しい。「各安全基地がない場合、何を感じか?」の例を示した。

・人的安全基地
…「思いを理解してもらいたい」・「思いを理解してもらって安心できた」・「思いを理解してもらって勇気がでた」

・組織的安全基地
…「こんな短期間にこの業績の要求なんか無理に決まってるだろ、ああ余裕ない→「こんな状況ではいちいち部下の思いにかまっていられない」という状況を生み出しやすい」・「□□が「やる気があればできる」だと。→従業員が不安やストレスに思っていることを相談しにくい環境になる」

・経済的安全基地
…「今後も働けるか不安でストレスだ」

ビジネス現場における「三つの安全基地」の役割

・人的安全基地
→労働者のメンタルヘルスの改善、リスクと挑戦のバランスをとりながら新規の事業活動を行えるため。
・組織的安全基地
→上司が部下の人的安全基地になるには環境が必要なため。職場内の数ある人間関係の中で、特に上司が部下の人的安全基地になることが大事。
・経済的安全基地
→経済的な安定が安心して働ける精神状態をもたらすため。

また、それぞれの安全基地が果たす役割は…

・人的安全基地
→教育
・組織的安全基地
→制度整備
・経済的安全基地
→人事考課制度の見直し。「安心を与えられている制度だろうか?」という視点で。

言及する安全基地の種類

この記事では「人的安全基地」と「組織的安全基地」に言及する。前述したように経済的安全基地は企業以外にも政府の役目も大きい。あえてここでは言及しない。経済的安全基地については政府にも大きな役目がある。例えばリストラについてだが、企業は企業が中長期的に存続するために選択することもある。経済的安全基地に関しては、決して企業だけがやることではない。法律で企業の行動に制限をかけることや企業の支援を政府は行う必要がある。

「三つの安全基地」を導入するため誰が何をするか?

・人的安全基地…人事労務部門が「教育」、組織的安全基地を整備することにて導入する。
・組織的安全基地…経営者や人事労務部門が「制度整備」にて導入する。

「三つの安全基地」を整備するための施策

「教育」と「制度整備」だ。

三つの安全基地を導入するための「教育」

先におすすめの書籍を紹介したが、実際に全ての社員へ教育を行うには、「研修」だろう。教育の手段としては研修が代表的だ。人事労務管理スタッフが主催の研修を行うことが望ましい。

人的安全基地を導入するための研修の内容については、職場で周りの方の安全基地になるためのコツや習慣を学べる「『セキュアベース・リーダーシップ』著者:ジョージ・コーリーザー、スーザン・ゴールズワージー、ダンカン・クーム 訳者:東方 邪美 プレジデント社 初版」がある。この書籍を参考にするのがおすすめだ。

人的安全基地とは心理学でいう安全基地とほとんど同義であり、安全基地になるための方法を学ぶことが重要だ。以下の記事で周りの方の安全基地になるための方法を記載しているので、ご参考いただきたい。

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「人的安全基地としてなすべきことは上司が部下に安心感を与え、部下の挑戦(リスクをとって利益を取りに行く)をサポートすることだ」と教育する。ビジネスの現場においては安全基地として、特に以下の特性が重要とされている。

・表2.1 セキュアベース・リーダーの九つの特性
1 冷静でいる
→深呼吸などで感情をコントロールし、感情的な対応をしない。
2 人として受け入れる
→例え相手が自分の信じられないことをしたとしても「その人はそうしたわけがあってした」とその存在を受け入れる事。
3 可能性を見通す
→その人が現在できていないことを見るだけでなく、その人が持つ可能性に注目し挑戦させること(他の特性と合わせて安心感を与えた状態で)。「フィードバック」「ブッシュする」「責任を持たせる」がコツ。
4 傾聴し、質問する
→自分の意見を押し付けるのではなく、相手から聞き出し相手に自分の意見を持たせる。
5 力強いメッセージを発信する
→その時言うとその人を後押しできる重要な視点を話すこと。
6 プラス面にフォーカスする
→危機の中、マイナスの状態ばかりに目が向いている部下を、プラスの面に目を向けさせてあげること。
7 リスクをとるよう促す
→「2」と「3」ができていることを前提とし、部下らに自律的にリスクへの挑戦を行ってもらうこと。
8 内発的動機で動かす
→外発的なお金(ボーナスなど)といった要因ではなく、「挑戦したい」や「この仕事がおもしろい」といった思いで人を動かすことだ。
9 いつでも話せることを示す
→安心感を求めるときに話すことができると言葉や態度で示すこと。
(参考 : 『セキュアベース・リーダーシップ』著者:ジョージ・コーリーザー、スーザン・ゴールズワージー、ダンカン・クーム 訳者:東方 邪美 プレジデント社 初版)
※さらに詳しくは『セキュアベース・リーダーシップ』をご覧いただきたい。

研修例

「安全基地」という言葉の認知度を考えると研修の開催が最良の手段だ。既存の研修制度などがあるだろう。事業場内の安全衛生委員会などの年間計画の際に盛り込んでほしい。以下に研修例をしめす。

(例1 : 従業員が周りの従業員の「三つの安全基地」になるための研修)
・テーマ…「三つの安全基地」
・内容…①従業員を取り巻くメンタルヘルスの現状、②三つの安全基地とは、③人的安全基地を感じる体験、④やってほしいこと、⑤まとめと質疑応答
・教育の方法…③は実習形式、それ以外は講義形式
・対象…全従業員、全役員(1回、30人程度)
・講師…○○
・時間…全体で60分
・評価…アンケート実施
・その他…組織的安全基地があるという根拠を用意しておく
(例2 : マネジメントに「三つの安全基地」を取り入れる)
・テーマ…マネジメントに「三つの安全基地」を取り入れる
・内容…
・教育の方法…
・対象…(1回、30人程度)
・講師…○○
・時間…全体で60分
・評価…アンケート実施
・その他…

三つの安全基地を導入するための「制度整備」

三つの安全基地を導入するには、研修で学んだことを実施できる環境を実施できる環境が求められる。今まで周りの人の安全基地となれていなかった人が安全基地になるには、環境の後押しが役立つ。また、組織として「三つの安全基地」を導入しているという意思表明の表れにもなる。

その制度整備は職場組織の各レベルごとに行うことができる。

職務レベルでの制度整備

特に上司が部下の人的安全基地になることがこのレベルで重要なことだ。研修により人的安全基地になる必要性の教育だけでなく、人的安全基地であったことをマネジメントの評価に如何に組み込むかが制度整備に求められる。

また、評価システムの構築を行う必要がある。人間関係の構築と維持を人事考課システムに組み込むことの重要性は書籍『セキュアベース・リーダーシップ』にて説明されている。

・トレーニングが終了すると、インベステックは人間関係の構築と維持を、年間評価プロセスに組み込んだ。人間関係でよい結果を示さなかった人は、その点をはっきりと指揮され、今後何が期待されるかを告げられた。金銭面での報酬も併せて導入された。こうして同社は人間関係をより明確に尊重する強い文化を築いていった。
(引用 : 『セキュアベース・リーダーシップ』著者:ジョージ・コーリーザー、スーザン・ゴールズワージー、ダンカン・クーム 訳者:東方 邪美 プレジデント社 初版)

それを踏まえて、評価システムを作るときは上述の「『セキュアベー・リーダーシップ』の」「セキュアベース・リーダーの九つの特性」」の視点が役立つだろう。

職場集団レベルでの制度整備

「この職場で安心感を得ながら働くにはこの部分を改善してほしい」といった声で制度整備を行うことが望ましい。職場(職場集団)環境の改善がメンタル・ヘルスに役立つ。

・1992年にILO(International Labour Organization: 国際労働機関)が世界各国の職場のストレス対策の成功事例を集めて分析した報告では、ストレス対策が成功した19事例のうち14事例が、作業改善や組織の再構築などの職場環境の改善を通じた対策でした。また、その報告では個人向けのアプローチの効果が一時的、限定的であるのに比べ、職場環境等の改善を通じた改善方法がより効果的であったとされています。その後、数多くの介入研究などの報告から、職場環境改善はメンタルヘルス不調の予防に有効であることが確かめられています。
(引用 : 『メンタルヘルス・マネジメント®︎検定試験公式テキスト〔第4版〕[Ⅰ種 マスターコース]』編者:大阪商工会議所 発行者:山本継 発行所:(株)中央経済社)

従業員の声が反映された制度整備を以下の進め方で行っていくのが望ましい。

(職場集団レベルでの職場環境等の改善の進め方)
a)目的、方針の設定
b)役割・責任・権限の明確化と組織づくり
c)職場集団での討議の実施と対策の検討
d)改善提案の実施と結果の記録
e)監査と見直し
(参考 : 『メンタルヘルス・マネジメント®︎検定試験公式テキスト〔第4版〕[Ⅰ種 マスターコース]』編者:大阪商工会議所 発行者:山本継 発行所:(株)中央経済社)
(計画例)
a) 目的、方針の設定
…「人的安全基地・組織的安全基地を導入する。」
b) 役割・責任・権限の明確化と組織づくり
…「上司が部下の人的安全基地となれる環境づくりを行う。評価に人的安全基地となれているかという観点をいれ、経営陣自らが従業員の安全基地となる。」
c) 職場集団での討議の実施と対策の検討
…「この新たな取組への不安を持つ従業員、特に部下を持つ上司への個別説明・面談を行う。」
d) 改善提案の実施と結果の記録
…「c)の個別説明・面談から組織的安全基地としの制度の改善を行う。」
e) 監査と見直し
…「安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)に「三つの安全基地」の取り組みをいれるなど、継続的な安全衛生管理を自主的に進めることができる体制にする。」
(参考 : 『メンタルヘルス・マネジメント®︎検定試験公式テキスト〔第4版〕[Ⅰ種 マスターコース]』編者:大阪商工会議所 発行者:山本継 発行所:(株)中央経済社)

企業組織レベルでの制度整備

三つの安全基地の組織的安全基地を導入するレベルである。このレベルでは人事労務部門が大きな役割を担う。以下はやることと注意点だ。

・経営戦略の明確化…安全基地の重要性に言及した戦略にする
・人事考課制度の適切な設計と運用…人的安全基地の成果を評価にいれること。

人事考課の制度整備

「三つの安全基地」を導入する上で人事労務部門・人事労務管理スタッフの役割

研修・権限も伴った事象(人事制度や事故)への介入

・組織的安全基地導入・運営のための制度整備
・従業員の人的安全基地となるためのモデル
・社内で人的安全基地を持ててない方の緊急的な人的安全基地になること

事業場内産業保健スタッフ・事業場外資源との連携

別項目で説明する産業保健スタッフの役割を理解した上で、「三つの安全基地」施策の実行を伝える。
・一次予防に役立つ
・研修を実施する
・「三つの安全基地」を制度として整備する
をポイントとして伝える。

教育

先述した教育を企画・運営する役割がある。

制度整備

先述した教育を企画・運営する役割がある。

「三つの安全基地」を導入する上で産業保健スタッフの役割

産業医、保健師、衛生管理者等について言及する。

産業医

(産業医)
・病態のアセスメントと就業上の配慮についての提案
・医療機関との情報交換・連携
・人事労務管理スタッフ・管理監督者との連携
・職場環境の改善提案
・メンタルヘルス対策に関する企画・教育
・産業保健スタッフのマネジメント、産業保健スタッフの統括
・メンタルヘルスに関する個人情報の保護
(参考 : 『メンタルヘルス・マネジメント®︎検定試験公式テキスト〔第4版〕[Ⅰ種 マスターコース]』編者:大阪商工会議所 発行者:山本継 発行所:(株)中央経済社 「見出し一覧より」)

「三つの安全基地」を導入する上で改めてお願いしたいことは、
人的安全基地は、

・もし部下の安全基地になることを悩んでいるようならば、その方の安全基地になっていただきたい。
・心理学の安全基地について情報収集いただきたい。
→愛着理論については研究がすすんでおり、現在日本で広まっている愛着のABCDモデル以外にも最新のモデル(例えばDynamic-Maturational Model of attachment and adaption)もある。安全基地にふれるときには愛着スタイルにもふれることもあるだろう。最新の情報は仕入れていていただきたい。

組織的安全基地では、

・企業が行う安全基地政策への理解・助言

である。

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保健師

(保健師)
・ストレスチェック制度の運用
・産業医との連携
・人事労務管理スタッフ・管理監督者との連携
・教育の企画
(参考 : 『メンタルヘルス・マネジメント®︎検定試験公式テキスト〔第4版〕[Ⅰ種 マスターコース]』編者:大阪商工会議所 発行者:山本継 発行所:(株)中央経済社 「見出し一覧より」)

「三つの安全基地」を導入する上で改めてお願いしたいことは、
人的安全基地は、

・もし部下の安全基地になることを悩んでいるようならば、その方の安全基地になっていただきたい。

組織的安全基地では、

・教育で学んだことでも組織体制によってできないこともある。だからこその組織的安全基地だとご理解いただきたい。教育も組織的安全基地の一部となる。組織が安全基地を重視している姿勢を示せるような教育の企画をしてほしい。

である。

衛生管理者等

(衛生管理者等)
・心の健康づくり計画の実施
・早期の気づき
・関係各所との連携
(参考 : 『メンタルヘルス・マネジメント®︎検定試験公式テキスト〔第4版〕[Ⅰ種 マスターコース]』編者:大阪商工会議所 発行者:山本継 発行所:(株)中央経済社 「見出し一覧より」)

「三つの安全基地」を導入する上で改めてお願いしたいことは、
人的安全基地は、

・愛着理論について情報収集をお願いしたい。
→安全基地とは心理学の愛着理論にて提唱されているものだ。よって、安全基地に触れるとき愛着理論の他の話題にも触れることがあるだろう。特に愛着スタイルについては触れることになるだろう。

組織的安全基地では、

・教育で学んだことでも組織体制によってできないこともある。だからこその組織的安全基地だとご理解いただきたい。教育も組織的安全基地の一部となる。組織が安全基地を重視している姿勢を示せるような教育の企画をしてほしい。

である。

最後に

私は「多くの方が安全基地を持ち、安全基地を周りの方に広めてほしい」という思いです。ただ、ビジネス現場において「三つの安全基地導入はコストだ」という認識が生まれるのはそれはそれで正しい認識だとも思います。ただ「三つの安全基地」という生産体制兼人事政策です。「中長期的にお金になるから」という理由でもいいので、どうか導入をしていただきたいと思います。少なくとも個人で人的安全基地に取り組むかぎり、お金はかかりません。お金のかかるHRテックサービスの利用なども安心感を与えることになるが、安全基地という考え方もぜひ導入していただきたい。

また、「三つの安全基地なんか必要なのか?」と疑問の方もいらっしゃるかと思います。安全基地(特に人的安全基地)がなくても、仕事において成果を出し成長してきた方もいらっしゃるかと思います。安全基地を持たずに仕事をされてきた方には尊敬の念を禁じえません。ただ、働く全ての方のメンタルヘルスを考慮すると、「三つの安全基地」の導入は必須だと考えております。多様性のもと成長してきた方がビジネス現場にでる年齢となっており、働く方の所属属性(性別・国籍・年齢など)も拡大しております。そんな中、今までの無言コミュニケーションではコミュニケーション不全に陥るでしょう。ぜひあなたから安全基地を安全基地を導入していただけましたら幸いです。

最後に、「 『セキュアベース・リーダーシップ』著者:ジョージ・コーリーザー、スーザン・ゴールズワージー、ダンカン・クーム 訳者:東方 邪美 プレジデント社 初版」が重要な参考書です。特に制度整備をする方には熟読をおすすめ致します。セキュアベース・リーダーシップの概念をご存じでなかった方にとっては、一読でも大きな価値を得ることができるでしょう。

献辞
「安全基地として執筆を支えてくれた…へ捧げる。始まりの「ディモルフォセカ」とともに。」

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