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養護・教育と愛着理論

児童発達支援でもみられる愛着障害とは?|愛着障害と発達障害の違いや、愛着障害にはどんな種類がある?

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児童発達支援にて愛着障害は、発達障害への支援と同じように支援の必要がある。この記事では、愛着障害と発達障害の違いや、愛着障害にはどんな種類があるかを紹介している。

愛着障害とは?

「愛着障害」を抱えていると、対人関係や人生に課題や困難を抱えやすい。この「愛着障害」と「愛着スペクトラム障害」は同義である。愛着スペクトラム障害とは岡田 尊司 氏が提唱するものだ。愛着障害には虐待や親の養育放棄による「反応性愛着障害」がある。岡田氏はそれを狭義の愛着障害としている。そして不安定型愛着により支障を来している状態と、狭義の愛着障害を合わせて、広義の愛着障害としている。愛着スペクトラム障害のスペクトラムとは、症状が曖昧な境界を持ちながら連続していることを意味する。

・愛着障害と愛着スペクトラム障害は同義。

・愛着スペクトラム障害のスペクトラムとは、症状が曖昧な境界を持ちながら連続していることを意味する。

・狭義の愛着障害が反応性愛着障害を指す。

・広義の愛着障害は狭義のものと、不安定型愛着により支障を来している状態を指す。

愛着障害の詳細を以下の記事で詳しく説明している。

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様々な愛着障害の定義

先に世間で代表的な愛着障害を紹介したが、学術的には様々な愛着障害がある。

※DSM-4-TRからDSM-5になって名称が変わったものもある。

資料6 : 様々な愛着障害の定義
・[反応性愛着障害(reactive attachment disorder)] :
DSM-4-TRでは①こどもの基本的な情緒欲求の持続的無視②こどもの身体的欲求無視③主たる保育者の頻繁な交替による安定した愛着形勢の阻害の何れかが原因。「通常、幼少期、小児期または青年期に初めて診断される障害(Disorders Usually First Siagnosed in Infancy, Childhood, or Adolescence)」に分類。
・脱抑制型愛着障害 :
初対面の人にもなれなれしく接近、過剰な親しみを示し、無警戒で誰にでも。(DSM-5ではDisinhibited Social Engagement Disorder [脱抑制社交障害 : DSED ; Trauma and Stressor-Related Disordersの1つ]に分類)
・抑制型愛着障害 : 警戒的、素直に甘えられず警戒、腹を立てたり嫌がったり矛盾態度・両価的(DSM-5ではReactive Attachment Disorder [反応性愛着障害 : RAD ; Trauma and Stressor-Related Disordersの一つ]に分類)
・[崩壊性愛着障害(Zeanah&Boris, 2000)] :
愛着対象の喪失の際の喪の作業(morning work)の失敗→外面的に何事もないように振舞いながら抑圧による不適応か絶望状態が続き抑鬱状態
・[安全基地の歪曲(Zeanah&Boris, 2000)] :
わざと自己を危険にさらし保護を得ようとする・しがみつきや探索抑制という分離不安障害・過剰な注意、気にする、従順・役割逆転による親へのしつけや世話統制などが見られる。
・[分離不安障害(Separation Anxiety Disorder)] :
DSM-4-TRでは、家庭または愛着をもっている重要人物からの分離、またはそれが予測される場合の反復的で過剰な苦痛、持続的で過剰な心配、分離に対する恐怖のために、学校やその他の場所へ行くことについての持続的な抵抗または拒否、反復する身体症状への訴え(例 : 頭痛、腹痛、嘔気、または嘔吐)等。
(引用 : 『愛着障害・社交障害・発達障害への「愛情の器」モデルによる支援の展開と意義―愛着修復プログラムと感情コントロール支援プログラムの提案―』米澤好史 和歌山大学教育学部心理学教室 2013年9月23日受理)

愛着障害と発達障害の違い

発達障害は、ADHDも、ASD (自閉症スペクトラム障害) も、先天的な脳機能障害であって、それは生まれつきもっている「特性」の問題である。愛着障害は、生まれたあとに、後天的にその子とかかわる特定の人との「関係性」の障害なのだ。よって、発達障害と愛着障害とでは、その行動の問題にいたる原因が違う。

多動の現れ方の違い

落ち着きなく動き回るという「多動」の特徴は、愛着障害(AD)にも見られるものである。ADHDの多動は行動の問題として起こり、「いつも」多動である。ASDの多動は、「ここにいていい」「これをしていればいい」という感覚・認知である居場所感の欠如が原因。居場所感を認知している場合には落ち着いている。しかし、居場所感が突然奪われるときや、いきなりの予定変更や場所変更で居場所感が見つからない場合には、多動になってしまう。

愛着障害の場合は、ムラがある感情が多動の原因。一日のうちでもとても変わりやすく、楽しくなったり悲しくなったりつまらなくなったりする。よって、多動そのものの現れ方も、落ち着いているときと多動なときの両方が見られる。嫌な気持ちやネガティブな感情が多くあって混乱している場合、いい気持ちやネガティブな感情がありあまっている興奮状態が制御できないときに、多動になりやすくなる。

片付けができないようにみえる現象

ADHDの場合は、「片付ける」という一連のいくつかの行動を最後までやり通すという、実行機能・遂行機能に問題がある。したがって、「片付ける」という一連の行動のかたまりを細かい行動に分解し、スモールステップで一つひとつ行動を促し、その確認をするという行動支援をしていけば、片付けができるようになる。

愛着障害では、「片付けない状態より、片付けた方が気持ちがいい」というポジティブな感情、「散らかった状態を見て、片付けたい・片付けよう」という意欲がないことが原因。愛着障害では、「今日できたことも、次の日にはまったくできない」ということになりやすく、成長として全然積み上がっていく感覚が持てないことが多い。行動の問題から生じている現象なのか、感情の問題から生じている現象なのかをしっかり捉えることが、発達障害と愛着障害の違いを見極める大切なポイントである。

ルールが守れないようにみえる現象

ADHDではルールを守らなければならないという遵守意識はある。しかし、注意欠如、衝動性や行動制御の問題から、結果的に規範から逸脱する行動をしてしまい、ルールが守れない行動となる。ASDの場合は、そのルールが自分の捉え方や認知と合致せず、絶対それを取り入れようとしない。そのため、ルールを守らない、ルールのある遊びに参加しないということになる。

愛着障害では、ルールを守ればどんないい気持ち、ポジティブな感情になるのかがわかっていない。「ルールを守ろう」という意欲そのものが育っていないのである。また、ネガティブな感情が生じたとき、そのネガティブな感情を抑えたり、紛らわせたりする感情コントロールが困難である。よって、どうしても規範から逸脱した行動、ルール破りの行動が頻発してしまう。そのような行動をすれば注目されることから、「愛情欲求行動」として逸脱行動が生じやすい。

不適切行動を「取り上げない」「無視する」対応への反応

ADHDでは、生起した行動に何らかの反応をして報酬を与えない、強化しないという対応をすると、その行動を消去されて行動しなくなる。

愛着障害での不適切な行動は、感情の問題から生じている。その行動を「取り上げない」「無視する」対応は、そのときの感情をわかってくれないという思いを生じさせ、「この行動をしたのに無視された」と感情的反応を誘発してしまう。この感情には、愛情欲求行動の1つ、注目されたい・アピールの要素がたいてい入っており、「取り上げない」「無視する」対応をされると、もっと注目してほしくなり、これでもかとその不適切行動を強くしたり、手を変え品を変えて別の不適切行動をするという結果を生む。

この違いは、ADHDと愛着障害の支援の違いのポイントである。不適切行動を「取り上げない」「無視する」対応はADHDの場合には有効ないい支援となる。しかし、愛着障害の場合にはしてはいけない支援なのである。

愛着障害発見のチェックポイント

児童発達支援において、愛着障害だと見分けることが重要である。見分け方を紹介する。

資料7 : 愛着障害発見のチェックポイント(改訂版)
・ものをさわりまくる : べたーっと(脱抑制は移行対象)/いじる(抑制型は時間つなぎ)・ものを独占して貸せない(反抗期の特徴持続)・ものをなくす(大事にできない)
・人にべたーっと抱きつく(脱抑制のみ)=飛び込み、潜り込み、まとわりつきも(アンビバレントな場合は同時に攻撃も)
・床に寝転ぶ、這い回る(安定と接触欲求)、寝技的に蹴る
・大事なものは壊せない、そう思えないものは乱雑に扱い壊す、絵を消したりする・ものを力任せに押し付ける、投げる等
・服装の乱れ、遺糞、遺尿、お尻ふきやトイレの後始末をしない
・痛がらない・噛みつく、指を突っ込む、指吸い、爪かみ、舌舐め、腕舐め、ものや人を舐める・がっつき食い
・手の指が伸びきらなかったり伸縮しない、ぎこちない
・多動(落ち着きがなく動き廻る、次々にものをさわりながら歩く、座っていてもゆらぐ) : 多動や意欲にムラがある(日や時間による。家庭に問題があると月曜日に多動、学童保育で多動。ムラがないのはADHD)・1対1だと比較的大人しい
・片付けできない : しようとする気持ちが生まれない点がADHD(本当にできない)と違う。片付け支援(入れる場所の枠組み作り)をしても壊したり、乱雑に押し込むのが愛着障害
・靴や靴下を嫌う : 知覚過敏によるASDと違うのは、束縛を嫌い、安心を知らない、床との接触感を欲しがる(寝転ぶのも同じで安定を求める)から。履かせようとしてもごまかしたり適当に扱う、いい加減なやり方は抑制型
・抑制型愛着障害・自閉傾向があるとフードを教室で着る、帽子を被る、タオルで覆う、狭い戸棚に籠るというような囲い行為をし、脱抑制愛着障害、ADHD傾向があると、裸足(自閉にもある)、衣服を脱ぐ、モノを触る等の刹那的開放的感触を求める。
・危険な行動をする、高い所に登る(ASD児でもそこが好きですることあり)
・母が愛着的に見えても、こどものほしがっているものとずれるアンビバレントタイプとこどもの方の捉え方が特異で受け止めれないASD原因の2つがある(愛情の行き違い)
・忘れ物する : ADHDは実行機能の問題だが、忘れても平気、なくてもいいと正当化する(愛情の基地がない)
・発言は自信なさげ・自分から建設的なことをしない
・渡されたものを落とす・伏し目がち、顔が歪む(抑制型)
・注意すると暗い顔になったり、反抗する・注意されると咳き込む等の身体症状(受け入れられないから)
・注目されたい行動・わざと友だちにいじわるをする(抑制型)・愛情試し行動(抑制型)[これはゆるされないかを試す、自作自演をしてどう対応されるかを調べる(疑心暗鬼)]
・愛情エスカレート行動 : 愛情を貯められず、愛情をもらう快感だけを求める(馴化)
・自分のせいにされることを恐れる(犯人捜しへの極端な拒絶反応=自己防衛→問われてもいないのに自分ではないと抗弁)
: 指摘されるとADHD児は「あっ、そうか」/ASD児は「だって」と理屈(納得するとできる)/愛着障害児は「知らん」と自己防衛/低体重出生児系LD児は「??」と気づけない。
・ウソ、自己正当化・他責(母や人のせいにする)
・執拗な攻撃、繰り返す常同行動的攻撃(ペンでつつく、ペンを折り続ける等)はASDのこどもの愛着障害の場合
愛着の問題や感情の問題を抱えるこどもの評価尺度には、鈴木ら(2011)、大河原(2011)等もあるが、愛着障害の発見には、どれかが当てはまれば更に注意深く観察するようなものが気付きとして適切であると考え、資料7のような形にまとめたものである。また、診断的には、ASD診断があれば、愛着障害との診断はしないが、別府(1997)が既に指摘しているように、人間関係の問題を持っている自閉児は、母親との愛着関係の形成が困難な場合が多く、ASD児が愛着障害を持っている、愛着の問題を抱えていることは非常に多い。従って、自閉障害への支援と愛着障害への支援を組み合わせていく必要がある(後述の事例を参照)。
(引用 : 『愛着障害・社交障害・発達障害への「愛情の器」モデルによる支援の展開と意義―愛着修復プログラムと感情コントロール支援プログラムの提案―』米澤好史 和歌山大学教育学部心理学教室 2013年9月23日受理)

愛着障害を抱えたこどもへの支援へは、「愛情の器」モデルに基づいた支援

このような愛着に問題を抱えたこども(愛着障害のこども)を支援するには、「愛情の器」モデルに基づく支援が有効とされる。「愛情の器」モデルに基づいた支援の詳細を以下の記事で詳しく説明している。

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児童発達支援のこどもにとっても支援者と愛着をきづくこと

児童発達支援のおいても、人間関係の支援として支援者との安定した愛着をきづくことが求められる。愛着について間違いがある理論が紹介されてきた。その責任が母にあるとし女性の社会進出を批判する材料に使われてきた経緯がある。

愛着関係は必ず生母が担わなくてはいけないものではなく、父、祖父母、支援員、保育士、教師、「だれでも担える」。そして、「いつでも取り戻せる、修復できる」のである。当然、その対象は女性とは限らず、男性支援員・教師・指導員・保育士でもなれる。

親以外の一定の他者との愛着を形成してしまうと当該親との愛着修復に困難をきたすのではないかとの危惧を指摘される。しかし、だれとも愛着関係を結べていないこどもは、結局親とも関係修復はできないままであり、誰かと愛着関係を経験することで関係の基盤ができ、練習ともなる。実際には親子関係の修復にも寄与する面もある。

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