基礎知識

「愛着タイプ」とは?|人間関係や生き方に大きな影響を与える(Dynamic-Maturational Model of attachment and adaption)

「愛着こうで提供する情報の信憑性について」です。ご確認ください。

「愛着タイプ」というものがある。人付き合いで悩みをかかえていないだろうか。周囲の人に適度な信頼を持てない。いたずらに不安を感じてしまう。そもそも他人への信頼に興味がない。そのような思いを抱いていないだろうか。以上のような悩みを「愛着タイプ」を含む「愛着理論-DMモデル」により理解できることが多い。

「愛着理論-DMモデル」とは?

愛着理論とは、「全ての人は生まれながら、親密さと安心を得ようとする欲求を持ち、自分を守ってくれると感じられる人からそれを得ようとする」という前提をもとに展開される理論である。そして、「DMモデル」を省略せずに記すと、「動的-成熟モデル(Dynamic Maturational model=DMM)」である。DMモデルとは「成人愛着面接(AAI=Attachment Adult Interview)」へのアプローチの一つなのだ。ここで一番大事なのは、この成人愛着面接とDMモデルにより、「愛着タイプ」が判明する。

成人愛着面接とは、内的作業モデルを評価する手段である。この内的作業モデルは、対人関係・社会的行動のテンプレートといえる。 愛着対象と自身の関係をもとに、新たに遭遇する他者のふるまいを予測・解釈し、自分の行動を決定していく。そのテンプレートである。

成人愛着面接では対象者とインタビューワーが面接方式で、内的作業モデルを評価する。この手段の特徴は、対象者が重要な事実を話しやすく、話すことで理解することがしやすい点である。DMモデルやABCDモデルは、この成人愛着面接を作成するための元になる。

DMモデルはABCDモデルより細かく正確に把握することができる。ABCDモデルでは、安定型愛着スタイル以外のパターンにおいて、研究時に一種の妥当性や適応性が考慮されていなかった。また、ABCDモデルを安定型・不安型などのような名称(愛着スタイル)で呼ぶのは、無礼で軽蔑的な面を含むとされ、ABCDモデルの提唱者より呼称が推奨されていないのである。

(参考 : 『セキュアベース・リーダーシップ』著者:ジョージ・コーリーザー、スーザン・ゴールズワージー、ダンカン・クーム 訳者:東方 邪美 プレジデント社 初版)
(参考 : 『日本人母子における愛着の世代間伝達』数井みゆき 遠藤利彦 田中亜希子 坂上裕子 菅沼真樹 一般社団法人日本教育心理学会 第48巻第3号)

愛着タイプの分類

Bタイプ、Aタイプ、Cタイプ、ACタイプ・A/Cタイプ、IOタイプ(その他の不安定型)がある。


(引用 : 『成人アタッチメントのアセスメント-動的-成熟モデルによる談話分析-』著者:パトリシア・M・クリテンデン、アンドレア・ランディーニ 監訳者:三上 謙一 岩崎学術出版社 初版 【図1.1 成人期におけるアタッチメント方略の動的-成熟モデル】)

各愛着タイプの特徴を以下の記事で詳しく説明している。

愛着理論-DMモデルの「Bタイプ」とは?|その特徴や愛着障害の克服の仕方は? それには安全基地が必要 愛着理論-DMモデルには「Bタイプ」がある。その解説をする。また「愛着障害」についても言及する。 「愛着」とは? まず「愛着」とは特...
愛着理論-DMモデルの「Aタイプ」とは?|その特徴や愛着障害の克服の仕方は? それには安全基地が必要 愛着理論-DMモデルには「Aタイプ」がある。その解説をする。また「愛着障害」についても言及する。 「愛着」とは? まず「愛着」とは特...
愛着理論-DMモデルの「Cタイプ」とは?|その特徴や愛着障害の克服の仕方は? それには安全基地が必要 愛着理論-DMモデルには「Cタイプ」がある。その解説をする。また「愛着障害」についても言及する。 「愛着」とは? まず「愛着」とは特...
愛着理論-DMモデルの「ACタイプまたA/Cタイプ」・「IOタイプ(その他の不安定型)」とは?|その特徴や愛着障害の克服の仕方は? それには安全基地が必要 愛着理論-DMモデルには 「ACタイプまたA/Cタイプ」・「IOタイプ(その他の不安定型)」 がある。その解説をする。また「愛着障害...

愛着理論-DMモデルの修正項目

愛着理論-DMモデルに修正項目がある。愛着タイプとは別に、心理的機能の広範囲にわたって影響を与えるものである。自己を守ったり、安全な生殖行動を促進したり、自分たちの子孫を守るための方略が機能不全を起こしている状態となる。

「抑うつ」・「失見当」・「再構成」・「否定的情動の侵入」・「身体表現症状」・「トラウマまたは喪失の未解決」という6つの修正項目がある。そして、トラウマまたは喪失の未解決には14の異なる形式がある。「軽視型」・「置き換えられた」 ・「遮断された」 ・「否認された」 ・「妄想的に修復された」 ・「とらわれ型」 ・「代理の」 ・「予期された」 ・「想像された」 ・「示唆された」 ・「ほのめかされた」 ・「妄想的に復讐的な」・「抑うつ的」 ・「無秩序型」である。

愛着理論-ABCDモデルとは違い、無秩序型などを修正項目として用いている。

(参考 : 『成人アタッチメントのアセスメント-動的-成熟モデルによる談話分析-』著者:パトリシア・M・クリテンデン、アンドレア・ランディーニ 監訳者:三上 謙一 岩崎学術出版社 初版)

情動・認知が傾いた愛着タイプが、対人関係に問題をもたらす

パートナー(妻や夫、恋人など)の感情に共感することが難しくなることがある。また、パートナーに対する要求が社会一般のものより過大になりやすいこともある。過剰に好意の承認を求めたり、過剰なコミュニケーション頻度の要求などだ。「偏向愛着タイプ」は対人関係に問題をつくるきっかけになりやすい。幼いころに安定した愛着を築けず、他人への不信感を抱えることが建設的な人間関係を築きにくくしている。

偏向愛着タイプとは、 物事を処理する際に因果関係への認知や情動がどちらかに偏向しやすい愛着タイプをいう。偏向愛着タイプを抱えていると、他人を信じることができずに人間関係を避けたり、人を求めても多くの不安を抱えるといえる。

(参考 :『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』岡田 尊司 光文社新書 初版)
(参考 : 『成人アタッチメントのアセスメント-動的-成熟モデルによる談話分析-』著者:パトリシア・M・クリテンデン、アンドレア・ランディーニ 監訳者:三上 謙一 岩崎学術出版社 初版)

愛着タイプは生き方にも大きな影響を与える

また愛着タイプの影響は対人関係のみに収まらない。人付き合いの型として働く愛着タイプは、生き方にも大きな影響を与える。

愛着タイプは生物学的な特性

また、愛着タイプは心理的なものであるが、同時に生物学的なものでもある。不安定な愛着タイプがもたらす問題は、心だけが原因ではないのである。愛着という現象はオキシトシンなどのホルモンの働きによって支えられている。オキシトシンは脳内の受容体に採り入れられて、効果を発揮する。効果とは、安心感を覚えたり、愛着スタイルが安定するように働いたりする。そのオキシトシンの働きをよくするには、脳内のオキシトシン受容体が多いことが求められる。オキシトシン受容体が多いかどうかには、幼いころに安心できる養育環境で育ったかどうかが関係している。安心できる養育環境であればオキシトシン受容体が増えやすい。オキシトシン受容体が多く、オキシトシンがよく働くと、子育てや対人関係に積極的・建設的に向き合っていきやすい。一方その逆だと、積極的・建設的に向き合っていきにくい。

偏向愛着タイプを抱えている人は対人関係が少ないことがある。それはストレス過剰などで子育てや対人関係が減少しているだけでなく、安定的な愛着スタイルを抱えている人と比べると、ニュートラルな状態で子育てや対人関係への積極性が少ないことが原因である。ニュートラルな精神状態のときでさえ、子育てや対人関係に無理を感じることがある。

(参考 :『回避性愛着障害~絆が稀薄な人たち~』岡田 尊司 光文社新書 初版)

愛着障害を克服する方法

※当見出しは資料から推定

子ども時代の内的作業モデル(※愛着スタイルや愛着タイプなどは内的作業モデルを理解するために分類したもの)と違う内的作業モデルを持つこともできる。

またBowlbyは発達的経路development pathwayという概念も提唱している。この経路とは軌道trajectoriesのことではない。つまり、一度道筋の方向付けが決まったなら、生涯を通じてそれが維持される、というものでは必ずしもないことを意味している。むしろ、経路という比喩があえて使用されたのは、変化点と交差点という発想が含まれているからであり、そこで個人の発達の方向性は最初の道筋からは必ずしも予測できない形で修正され得るのである。
(引用 : 『成人アタッチメントのアセスメント-動的-成熟モデルによる談話分析-』著者:パトリシア・M・クリテンデン、アンドレア・ランディーニ 監訳者:三上 謙一 岩崎学術出版社 初版)

つまり、子ども時代の内的作業モデルは今後の人生で変えることができるのだ。

「安全基地」とは?

安全基地とは「心細いとき、そのことを素直に話せて、頼ることができる人のこと。安全基地に頼ると、安心したり、もう一度やってみようと思ったりできる存在」だ。

不安になった時にその不安を話せ、気持ちを受け止めてもらえ、心が温かくなる。そのような人があなたにとっての安全基地だ。何かに挑戦していて辛い思いでつまったとき、その安全基地に頼ることで、気持ちを整理でき、もう一度やってみようと思ったりできる。

安全基地は心理学の愛着理論からうまれた。その愛着とは「人が生後数ヶ月のあいだに特定の人(母親や父親)との間に結ぶ情愛的な絆」だ。安定したアタッチメント関係を養育者と作っている子どもは、養育者から程度な距離に離れて探索し、離れている時間が長くなったり、何かに苦痛を感じると、安全な避難所として養育者の元に戻ってくる。これがアタッチメント対象であり安全基地だ。子どもたち成長するにつれ、親とは異なった安全基地を作ってゆく。保育園の先生、学校の先生、友達、恋人、そして成人すると配偶者などが、新たな安全基地となる。
また、並行して、安定したアタッチメント対象は人が認知する過程の中で心の中に作り上げる対人関係のモデルをつくりあげる。これが他者に対する基本的信頼感や自己に対する肯定感の基盤となり、人の社会・情緒的発達に際した危機からの保護や、危機から立ち直る心の拠り所として役に立つ。

・愛着とは、アタッチメント(Attachment)と呼ばれ、1969年にボウルビィによって提唱された。ボウルビィは愛着(Attachment)を「人が生後数ヶ月のあいだに特定の人(母親や父親)との間に結ぶ情愛的な絆」と定義している。
(引用 : 『アタッチメント(愛着)の形成と、保育の役割』平野美沙子 環境と経営 : 静岡産業大学論集 19(2))
・さて、1、2歳児とその養育者との関係に、アタッチメント形成の現れとして「安全基地現象」がみられる(Bowlby, 1969/1982)。安定したアタッチメント関係を養育者と作っている子どもは、養育者から程度な距離に離れて探索し、離れている時間が長くなるか何かに苦痛を感じると、養育者の元に戻ってくる(安全な避難所 ; 寄港できる港)。このように、いわば自立と依存のバランスが取れている乳幼児が、安定したアタッチメント形成をしていると考えられる。成長するにつれ、子どもは養育者から離れられる距離が増してくる。小学校、中学校、高校と、より遠くに探索しては、親の元に戻ってくる。また、子どもたちは、親とは異なったアタッチメント対象(安全基地)を作ってゆく。保育園の先生、学校の先生、友達、恋人、そして成人すると配偶者などが、新たな安全基地となる。並行して、これら安全基地はアタッチメントについての内的表象いわゆるinternal working modelの重要な構成要素として、個体の行動に影響を与えることとなる(Bowlby, 1969/1982)。安定したアタッチメント対象は心の安全基地(表象の中で)となり、他者に対する基本的信頼感や自己に対する肯定感の基盤となり、個体の社会・情緒的発達の保護因子やレジリエンスとなるとされている。
(引用 : 『人間のアタッチメントについて―人間の乳幼児のアタッチメントとその障害―』 青木豊 目白大学 特別講演-こころの安全基地(第22回学術集会 2016. 02))

安全基地をつくる

方法の一つに、愛着に注目したアプローチを試みようとする流れがある。その人の身近な人が安全基地としてその人の内面(内的作業モデル)を自立した安定したものへとしようとするアプローチだ。「愛着の傷をいかに克服し、安定した愛着スタイル ・愛着タイプ をもつことができるか。また、不安定な部分をいかに補えるか」が重要になる。安全基地とは、いざというとき頼ることができ、守ってもらえる居場所であり、そこを安心の拠り所、心の支えとすることのできる存在である。対人関係において、その人が安心できる人のことである。幼児が不安になったときに、「ママ・パパ」と駆け寄るような相手である。安全基地とは自分という存在が無条件に受け入れられる場所なのである。自分が何を感じ、何を思っているか、安心して話すことができる相手が安全基地になりえる。そのように自分が受け入れられると、自分の人生に対する主体性や責任を得ることができる。自分が自分の心が大切にされることで、自分自身を大切にできるようになるのである。

大人にとっての現実的な安全基地

※当見出しは資料から推定
現実的な「大人の安全基地は、自分と違うものをもって生まれていても、自分と違う環境で育ち、自分と違う営みをしてきていても、自分の気持ちを無条件に受け止めてくれる人」だ。共感とは違う。自分とは違う気持ちを持つ人の存在を認められるかだ。

安全基地をつくるだけではない、愛着障害を克服する方法

また、それを助ける有効な手段が自分の感情を理解する力だ。

安全基地をつくることは克服への第一歩

どんな愛着でも克服方法は変わらない。今ある不安や心配、無力感、苦しみを受け入れてもらえることが克服への第一歩である。あなたが不安・心配、無力感、苦しみといったものでいっぱいだということを、一緒に感じてもらうことが必要である。これをしてくれる人が安全基地なのだ。

安全基地に共感してもらうことで内省力・共感力が身に付く

愛着障害なのは「情動と理性のどちらかに認知の偏りが生じている状態」だからである。認知の偏りを戻すことで愛着障害を克服できる。その認知の偏りを戻すには、「振り返り力」を高める必要がある。振り返り力とは、自分に起きた事実を客観的に受け止め、過剰に反応しない技術力と言い換えることができる。その振り返り力を高めるには、落ち着いた状態となり、自他の感情や思いに気づく能力が必要だ。

安定した愛着の人は、体験したことにしっかり向き合う。その向き合い方も客観的であり、前向きなものになりやすい。心情的な過剰反応をするのではなく、事実を客観的に受け止めることで、事態に冷静に対処することができる。

今の自分の思いや欲求に飲み込まれず、相手の気持ちや自分のふるまいを客観的に見る力である「内省力・共感力」が、振り返る力をもたらす。内省力や共感力は、安全基地に共感的な対応をしてもらうことで身につく。内省力と共感力は背中合わせの能力であると考えられているもので、共感的な対応をしてもらうことが、内省力を育む。つまり、愛着障害の克服は、幼い頃の共感不足を取り戻ることで達成できるのである。

感情に飲み込まれない力を身に付ける

そしてもう一つ、マインドフルネス・瞑想が振り返り力を高めるのに大変役に立つ。呼吸を整えることで、刺激で乱れている頭を整えてクリアにすることがマインドフルネス・瞑想の本質的な価値となる。「頭をクリアにする力」とでも言える。マインドフルネス・瞑想については所要時間や呼吸のタイミングなど様々な方法がある。マインドフルネス教室で学ぶ以外にも、インターネットや書籍でも紹介さており、ご自身にあったやり方を、比較しながら探すことができる。

「安全基地をつくり愛着障害を克服するには?」
認知の偏りを戻すためには「振り返り力」を高める必要がある。振り返り力は「内省力・共感力」と「頭をクリアにする力」がもたらすものだ。共感してもらうことで「内省力・共感力」が育まれる。マインドフルネス・瞑想をすることで「頭をクリアにする力」を得ることができる。激しく感情が揺らされる愛着に起因する出来事があった時にも、頭をクリアにし、相手の事情に共感を持ち自身の内省をすることができれば、あなた自身の人生を生きやすいものにすることができる。

それでも大事なことが「あなたの周りの方が安全基地になること」

それでも大事なことが「あなたの周りの方が安全基地になること」だ。内省力・共感力も大事だし、マインドフルネスなどで心を落ち着ける能力も大事だが、安全基地も大事だ。

安全基地は内省力や共感力、心を落ち着ける力を得るサポートとなる。安全基地に頼ることで、それらを持っていなくても体感できるからだ。

「あなたの周りの人が安全基地を持てる」ようなチャンスがあれば掴んで欲しい。

(参考 : 『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』岡田 尊司 光文社新書 初版)
(参考 :『回避性愛着障害~絆が稀薄な人たち~』岡田 尊司 光文社新書 初版)
(参考 : 『愛着障害の克服 「愛着アプローチ」で、人は変われる』岡田 尊司 光文社新書 初版)
(参考 : 『成人アタッチメントのアセスメント-動的-成熟モデルによる談話分析-』著者:パトリシア・M・クリテンデン、アンドレア・ランディーニ 監訳者:三上 謙一 岩崎学術出版社 初版)

どのようなとき安全基地を持っていると言えるのか?

どのようなとき安全基地を持っていると言えるのか。それは、頼ったときに安心感を得ることができたときといえる。自分の気持ちに共感的に応答してくれることが安全基地の重要な要素である。

しかし、安全基地を持たずに大人になったといえる人ほど、安全基地をつくることが難しいといえるだろう。安全基地を持たずに生きるには、自分の気持ちに共感的な応答をしてもらうことを、捨てる必要があるからである。安全基地になるはずだった人に一種の絶望をもったため、安全基地をあきらめたといえる。安全基地をもう一度つくることは、絶望してあきらめたことにもう一度挑戦することなのだ。

(参考 : 『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』岡田 尊司 光文社新書 初版)
(参考 : 『愛着障害の克服 「愛着アプローチ」で、人は変われる』岡田 尊司 光文社新書 初版)

当サイトについて

当サイトは安全基地・愛着の情報を多く発信しています。安全基地・愛着障害の専門サイトです。安全基地や愛着障害といった情報は以下カテゴリー記事をご覧ください。