不安定型愛着スタイルが原因のもの

「パートナーの苦しみに共感できない」原因は回避型愛着スタイル|それを克服するには?

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パートナーの苦しみに共感できない。パートナーが苦しんでいてもその気持ちがわからない。共感を求められてもたじろいでしまう。うっとうしいと思う。これは回避型愛着スタイルが一因であるとも考えられる。問題解決のため、不安定な愛着が原因という視点(愛着障害という視点)もある。回避型愛着スタイルを含む愛着スタイルを知ることで、悩みへの理解を深めることができる。

不安定型な愛着スタイルが原因

回避型愛着スタイルは愛着スタイルの一つだ。その「愛着」とは、特定の人に対する特別な結びつきのことだ。また、人格のもっとも土台の部分を形造っているものである。そして「愛着スタイル」とは、対人関係の在り方に大きな影響を与えるものである。愛着スタイルは人付き合いの型とも言えるものであり、生まれてからの人付き合いが愛着スタイルを形作っていく。産みの母との関わりを筆頭に、父、育ての母、祖父母など、さまざまな他人との関わりが愛着スタイルを形作っていくことになる。社会で生きるとは人付き合いの連続であり、その原点となるのが彼らである。彼らとの付き合いによって、相手に助けを求めることや、その結果をどれだけ期待するかといった愛着スタイルが形造られる。

また愛着スタイルは人付き合いだけでなく、その人の生き方にも大きな影響を与えている。自分の人生に責任ある行動を取れないこともみられる。例えば、学生が試験勉強できない。仕事において、将来がかかった試練に挑戦したいのに挑戦できない。酒やゲームだけでなく何か悪影響が強いものに依存してしまう。自分が望む人生に向かっていくことができないのである。そもそも望む人生というのを持てなかったりする。

(参考 : 『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』岡田 尊司 光文社新書 初版)
(参考 : 『回避性愛着障害~絆が稀薄な人たち~』岡田 尊司 光文社新書 初版)

愛着スタイルの分類

その愛着スタイルには大きく分けて安定型と不安定型の2つがある。不安定型は、さらに不安型、回避型、恐れ・回避型、未解決型に分けられる。安定型、不安型、回避型、恐れ・回避型、未解決型だ。

・愛着スタイル→「安定型」と「不安定型」

・不安定型→「不安型」と「回避型」と「恐れ・回避型」と「未解決型」

(参考 : 『回避性愛着障害~絆が稀薄な人たち~』岡田 尊司 光文社新書 初版)

不安定な愛着がもたらすもの

不安定な愛着は様々な悩みをもたらす。人間の悩みほとんどは4つに分類できる。それをHARMの法則というが、「人間の悩みのほとんどはHealth(健康)・Ambition(キャリア)・Relationship(人間関係)・Money(お金)に分類できる。」というものだ。以下、参考文献からHARMの法則に沿って症状のまとめである。

「Ambition(キャリア」 →人間関係の問題を職場に持ち込んでしまう(愛着不安が根本)。人生の課題からどうしても逃げてしまう(愛着回避が根本)。
「Relationship(人間関係)」 →密接になる対人関係に不安を持ちやすく、その不安が行動に出ることで対人関係が悪化する傾向がみられる。パートナーが自分をどう評価するかによって、自分自身に対する評価まで変化しやすいという特徴がある。(愛着不安が根本)。 人付き合いを避ける傾向にあり、自分の未来や将来に対する責任を避けがちになる傾向がみられる。恋人やパートナーから助けを求められることが苦手であり、助けに応えるという反応も見られにくい。(愛着回避が根本)。
また、
「Health(健康)」 →他のA・R・Mがもたらすストレスによる身体的不調。
「Money(お金)」 →他のA・R・Hがもたらすストレスや葛藤を解消するため、過剰消費をもたらす。

不安定な愛着が対人関係に課題や困難さをもたらす

回避が強い愛着を抱えていると、パートナー(妻や夫、恋人など)の感情に共感することが難しくなることがある。不安が強い愛着を抱えていると、パートナーに対する要求が社会一般のものより過大になりやすい。過剰に好意の承認を求めたり、過剰なコミュニケーション頻度の要求などだ。このように、不安定な愛着は対人関係に問題をつくるきっかけになりやすい。幼いころに安定した愛着を築けず、他人への不信感を抱えることが建設的な人間関係を築きにくくしている。他人を信じることができず、人間関係を避けるか、人を求めても多くの不安を抱えるかにわかれる。愛着スタイルでいうと、前者が回避型愛着スタイル、後者が不安型愛着スタイルである。

(参考 :『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』岡田 尊司 光文社新書 初版)

不安定な愛着は生き方にも課題や困難さをもたらす

また不安定な愛着の影響は対人関係のみに収まらない。不安定な愛着は、生き方にも課題や困難さをもたらす。 例えば、回避が強い愛着を抱えていると、自分の人生に対する積極的な行動をとることが難しくなる。自分の人生であるのに、どこか流れされるような生き方に終始しやすい。彼らは自分を大切にすることを身に着けられていないことが多い。愛着が確立されたものになる段階で自分が大切にされていないと感じるためである。すると、人生に対する無気力さや無関心さ、投げやりさを覚えやすい。悩みがある状態ときに仕事のやる気が出にくいことを想像していただければわかりやすい。

不安が強い愛着では、誰か頼る相手がいることが助けになることもある。

(参考 : 『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』岡田 尊司 光文社新書 初版)
(参考 :『回避性愛着障害~絆が稀薄な人たち~』岡田 尊司 光文社新書 初版)

愛着スタイルは生物学的な特性

また、愛着スタイルは心理的なものであるが、同時に生物学的なものでもある。不安定型愛着スタイルがもたらす問題は、心だけが原因ではないのである。愛着という現象はオキシトシンなどのホルモンの働きによって支えられている。オキシトシンは脳内の受容体に採り入れられて、効果を発揮する。効果とは、安心感を覚えたり、愛着スタイルが安定するように働いたりする。そのオキシトシンの働きをよくするには、脳内のオキシトシン受容体が多いことが求められる。オキシトシン受容体が多いかどうかには、幼いころに安心できる養育環境で育ったかどうかが関係している。安心できる養育環境であればオキシトシン受容体が増えやすい。オキシトシン受容体が多く、オキシトシンがよく働くと、子育てや対人関係に積極的・建設的に向き合っていきやすい。一方その逆だと、積極的・建設的に向き合っていきにくい。

不安定型愛着スタイルを抱えている人は対人関係が少ないことがある。それはストレス過剰などで子育てや対人関係が減少しているだけでなく、安定的な愛着スタイルを抱えている人と比べると、ニュートラルな状態で子育てや対人関係への積極性が少ないことが原因である。ニュートラルな精神状態のときでさえ、子育てや対人関係に無理を感じることがある。

(参考 :『回避性愛着障害~絆が稀薄な人たち~』岡田 尊司 光文社新書 初版)

「安全基地」とは?

安全基地とは「心細いとき、そのことを素直に話せて、頼ることができる人のこと。安全基地に頼ると、安心したり、もう一度やってみようと思ったりできる存在」だ。

不安になった時にその不安を話せ、気持ちを受け止めてもらえ、心が温かくなる。そのような人があなたにとっての安全基地だ。何かに挑戦していて辛い思いでつまったとき、その安全基地に頼ることで、気持ちを整理でき、もう一度やってみようと思ったりできる。

安全基地とは心理学の愛着理論からうまれたものだ。その愛着とは「人が生後数ヶ月のあいだに特定の人(母親や父親)との間に結ぶ情愛的な絆」だ。安定したアタッチメント関係を養育者と作っている子どもは、養育者から程度な距離に離れて探索し、離れている時間が長くなったり、何かに苦痛を感じると、安全な避難所として養育者の元に戻ってくる。これがアタッチメント対象であり安全基地だ。子どもたち成長するにつれ、親とは異なった安全基地を作ってゆく。保育園の先生、学校の先生、友達、恋人、そして成人すると配偶者などが、新たな安全基地となる。

また、並行して、安定したアタッチメント対象は人が認知する過程の中で心の中に作り上げる対人関係のモデルをつくりあげる。これが他者に対する基本的信頼感や自己に対する肯定感の基盤となり、人の社会・情緒的発達に際した危機からの保護や、危機から立ち直る心の拠り所として役に立つ。

・愛着とは、アタッチメント(Attachment)と呼ばれ、1969年にボウルビィによって提唱された。ボウルビィは愛着(Attachment)を「人が生後数ヶ月のあいだに特定の人(母親や父親)との間に結ぶ情愛的な絆」と定義している。
(引用 : 『アタッチメント(愛着)の形成と、保育の役割』平野美沙子 環境と経営 : 静岡産業大学論集 19(2))
・さて、1、2歳児とその養育者との関係に、アタッチメント形成の現れとして「安全基地現象」がみられる(Bowlby, 1969/1982)。安定したアタッチメント関係を養育者と作っている子どもは、養育者から程度な距離に離れて探索し、離れている時間が長くなるか何かに苦痛を感じると、養育者の元に戻ってくる(安全な避難所 ; 寄港できる港)。このように、いわば自立と依存のバランスが取れている乳幼児が、安定したアタッチメント形成をしていると考えられる。成長するにつれ、子どもは養育者から離れられる距離が増してくる。小学校、中学校、高校と、より遠くに探索しては、親の元に戻ってくる。また、子どもたちは、親とは異なったアタッチメント対象(安全基地)を作ってゆく。保育園の先生、学校の先生、友達、恋人、そして成人すると配偶者などが、新たな安全基地となる。並行して、これら安全基地はアタッチメントについての内的表象いわゆるinternal working modelの重要な構成要素として、個体の行動に影響を与えることとなる(Bowlby, 1969/1982)。安定したアタッチメント対象は心の安全基地(表象の中で)となり、他者に対する基本的信頼感や自己に対する肯定感の基盤となり、個体の社会・情緒的発達の保護因子やレジリエンスとなるとされている。
(引用 : 『人間のアタッチメントについて―人間の乳幼児のアタッチメントとその障害―』 青木豊 目白大学 特別講演-こころの安全基地(第22回学術集会 2016. 02))

安定した愛着に重要な「安全基地」

今まで述べてきたように、不安定型愛着スタイルを抱えていると人間関係や生き方に症状といえるような課題を抱えやすい。人生をもっと生きやすく実り豊かなものしたい、今抱えているさまざまな問題を良い方向に解決していきたい、もっと幸福な人生を手に入れたい。このような愛着スタイルによる症状を回復しようと思うときには、「愛着の傷をいかに克服し、安定した愛着スタイルをもつことができるか。また、不安定な部分をいかに補えるか」が重要になる。

そのためには、その人の安全基地となる存在が助けになる。安全基地とは、いざというとき頼ることができ、守ってもらえる居場所であり、そこを安心の拠り所、心の支えとすることのできる存在である。対人関係において、その人が安心できる人のことである。幼児が不安になったときに、「ママ・パパ」と駆け寄るような相手である。幼児はそのように安全基地を頼り安心することで、また活発に行動できるのである。安全基地とは自分という存在が無条件に受け入れられる場所なのである。自分が何を感じ、何を思っているか、安心して話すことができる相手が安全基地になりえる。そのように自分が受け入れられると、自分の人生に対する主体性や責任を得ることができる。自分が大切にされることで、自分を大切にできるようになるのである。

(参考 : 『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』岡田 尊司 光文社新書 初版)
(参考 :『回避性愛着障害~絆が稀薄な人たち~』岡田 尊司 光文社新書 初版)

大人にとっての現実的な安全基地

※当見出しは資料から推定
現実的な「大人の安全基地は、自分と違うものをもって生まれていても、自分と違う環境で育ち、自分と違う営みをしてきていても、自分の気持ちを無条件に受け止めてくれる人」だ。共感とは違う。自分とは違う気持ちを持つ人の存在を認められるかだ。

どのようなとき安全基地を持っていると言えるのか?

どのようなとき安全基地を持っていると言えるのか。それは、頼ったときに安心感を得ることができたときといえる。自分の気持ちに共感的に応答してくれることが安全基地の重要な要素である。

しかし、安全基地を持たずに大人になったといえる人ほど、安全基地をつくることが難しいといえるだろう。安全基地を持たずに生きるには、自分の気持ちに共感的な応答をしてもらうことを、捨てる必要があるからである。安全基地になるはずだった人に一種の絶望をもったため、安全基地をあきらめたといえる。安全基地をもう一度つくることは、絶望してあきらめたことにもう一度挑戦することなのだ。

愛着障害を克服するには安全基地が必要なだけではなく、感情に飲み込まれない力も必要になる。その力を身に着ける方法などを以下の記事で詳しく解説している。

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まとめ

愛着スタイルによって人付き合いの型がつくられ、生き方にも大きな影響を与えている。パートナーの苦しみに共感できないのは、愛着スタイルが他人との親密な関係を避ける方向へ作用していることが多い。安全基地を持ち、安定した愛着を得て認知の偏りを戻すことが症状の解決に重要である。

また、回避型愛着スタイルの特徴を、以下の記事で詳しく説明している。

「回避型愛着スタイル」とは?| その特徴や克服の仕方は? 克服には安全基地が重要 「回避型愛着スタイル」とは、「他者は自分を助けてくれるか、信頼できるか」と疑問を持ち、親密な関りを避ける回避をもとに情報の認知・判断...

愛着スタイル診断テストで愛着スタイルを診断できる

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