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愛着障害の克服は、安全基地を見つけることから始まる。安全基地とともに、自分の過去の傷を見直していく。過去から現在まで続く傷を乗り越えることで、対人関係や生き方の課題・困難といった悪循環を解決していく。この記事では主に愛着障害の治し方について説明する。また、身近な人の安全基地になり方についても説明する。
「愛着障害」とは
不安定な愛着を抱えていると、対人関係や生き方において課題や困難さを抱えやすくなる。周囲の人に適度な信頼を持てなかったり、人付き合いにいたずらに不安を感じてしまう。そもそも他人への信頼に興味がない。また、人生で大事な行動をやらなければならないが、どうしても行動に移せない。例えば、このような状態が、 不安定型愛着に伴って支障を来たしている状態が愛着障害である。
愛着障害のくわしい定義について以下の記事で詳しく説明している。
「愛着」や「愛着スタイル」とは
愛着理論の「愛着」とは特定の人に対する特別な結びつきのことだ。また、人格のもっとも土台の部分を形造っているものである。脳内のホルモン作用がかかわる生理学的な仕組みである。その型として愛着スタイルというものがある。この愛着の型は、安定した型と不安定な型がある。これが不安定な型といえると、対人関係や生き方に課題・困難さをもたらす。愛着の型の一種である「愛着スタイル」・「愛着タイプ」について、以下の記事で詳しく解説している。
(参考 : 『回避性愛着障害~絆が稀薄な人たち~』岡田 尊司 光文社新書 初版)
安定した安全基地を持てないことで、愛着の課題が生じる
「心細いとき、そのことを素直に話せて、頼ることができる人のこと。安全基地に頼ると、安心したり、もう一度やってみようと思ったりできる存在」をもっていなかったり、これが安定した存在でないなど、安定した安全基地を持てないことで、愛着の課題が生じる。これがいわゆる愛着障害だ。また、特定の人に対する特別な結びつきが不安定であることを、不安定な愛着であるとも言われる。
不安定な愛着がもたらすもの
不安定な愛着は様々な悩みをもたらす。人間の悩みほとんどは4つに分類できる。それをHARMの法則というが、「人間の悩みのほとんどはHealth(健康)・Ambition(キャリア)・Relationship(人間関係)・Money(お金)に分類できる。」というものだ。以下、参考文献からHARMの法則に沿って症状のまとめである。
「Relationship(人間関係)」 →密接になる対人関係に不安を持ちやすく、その不安が行動に出ることで対人関係が悪化する傾向がみられる。パートナーが自分をどう評価するかによって、自分自身に対する評価まで変化しやすいという特徴がある。(愛着不安が根本)。 人付き合いを避ける傾向にあり、自分の未来や将来に対する責任を避けがちになる傾向がみられる。恋人やパートナーから助けを求められることが苦手であり、助けに応えるという反応も見られにくい。(愛着回避が根本)。
また、
「Health(健康)」 →他のA・R・Mがもたらすストレスによる身体的不調。
「Money(お金)」 →他のA・R・Hがもたらすストレスや葛藤を解消するため、過剰消費をもたらす。
不安定な愛着が対人関係に課題や困難さをもたらす
回避が強い愛着を抱えていると、パートナー(妻や夫、恋人など)の感情に共感することが難しくなることがある。不安が強い愛着を抱えていると、パートナーに対する要求が社会一般のものより過大になりやすい。過剰に好意の承認を求めたり、過剰なコミュニケーション頻度の要求などだ。このように、不安定な愛着は対人関係に問題をつくるきっかけになりやすい。幼いころに安定した愛着を築けず、他人への不信感を抱えることが建設的な人間関係を築きにくくしている。他人を信じることができず、人間関係を避けるか、人を求めても多くの不安を抱えるかにわかれる。愛着スタイルでいうと、前者が回避型愛着スタイル、後者が不安型愛着スタイルである。
不安定な愛着は生き方にも課題や困難さをもたらす
また不安定な愛着の影響は対人関係のみに収まらない。不安定な愛着は、生き方にも課題や困難さをもたらす。 例えば、回避が強い愛着を抱えていると、自分の人生に対する積極的な行動をとることが難しくなる。自分の人生であるのに、どこか流れされるような生き方に終始しやすい。彼らは自分を大切にすることを身に着けられていないことが多い。愛着が確立されたものになる段階で自分が大切にされていないと感じるためである。すると、人生に対する無気力さや無関心さ、投げやりさを覚えやすい。悩みがある状態ときに仕事のやる気が出にくいことを想像していただければわかりやすい。
不安が強い愛着では、誰か頼る相手がいることが助けになることもある。
(参考 :『回避性愛着障害~絆が稀薄な人たち~』岡田 尊司 光文社新書 初版)
愛着障害を克服するには、安全基地を持つことが一番大事
愛着障害を抱えていると人間関係や生き方に症状といえるような課題を抱えやすい。
・人生をもっと生きやすく実り豊かなものしたい。
・今抱えているさまざまな問題を良い方向に解決していきたい。
・もっと幸福な人生を手に入れたい。
このような愛着スタイル ・愛着タイプ による症状を回復しようと思うときには、「愛着の傷をいかに克服し、安定した愛着スタイル ・愛着タイプ をもつことができるか。また、不安定な部分をいかに補えるか」が重要になる。
そのためには、その人の安全基地となる存在が助けになる。安全基地とは、いざというとき頼ることができ、守ってもらえる居場所であり、そこを安心の拠り所、心の支えとすることのできる存在である。対人関係において、その人が安心できる人のことである。幼児が不安になったときに、「ママ・パパ」と駆け寄るような相手である。幼児はそのように安全基地を頼り安心することで、また活発に行動できるのである。安全基地とは自分という存在が無条件に受け入れられる場所なのである。自分が何を感じ、何を思っているか、安心して話すことができる相手が安全基地になりえる。そのように自分が受け入れられると、自分の人生に対する主体性や責任を得ることができる。自分が大切にされることで、自分を大切にできるようになるのである。
(参考 :『回避性愛着障害~絆が稀薄な人たち~』岡田 尊司 光文社新書 初版)
愛着障害を克服する方法
※当見出しは資料から推定
子ども時代の内的作業モデル(※愛着スタイルや愛着タイプなどは内的作業モデルを理解するために分類したもの)と違う内的作業モデルを持つこともできる。
(引用 : 『成人アタッチメントのアセスメント-動的-成熟モデルによる談話分析-』著者:パトリシア・M・クリテンデン、アンドレア・ランディーニ 監訳者:三上 謙一 岩崎学術出版社 初版)
つまり、子ども時代の内的作業モデルは今後の人生で変えることができるのだ。
安全基地をつくる
方法の一つに、愛着に注目したアプローチを試みようとする流れがある。その人の身近な人が安全基地としてその人の内面(内的作業モデル)を自立した安定したものへとしようとするアプローチだ。「愛着の傷をいかに克服し、安定した愛着スタイル ・愛着タイプ をもつことができるか。また、不安定な部分をいかに補えるか」が重要になる。そのためには安全基地をつくらなければならない。
安全基地とは「心細いとき、そのことを素直に話せて、頼ることができる人のこと。安全基地に頼ると、安心したり、もう一度やってみようと思ったりできる存在」だ。
安全基地とは心理学の愛着理論からうまれたものだ。その愛着とは「人が生後数ヶ月のあいだに特定の人(母親や父親)との間に結ぶ情愛的な絆」だ。安定したアタッチメント関係を養育者と作っている子どもは、養育者から程度な距離に離れて探索し、離れている時間が長くなったり、何かに苦痛を感じると、安全な避難所として養育者の元に戻ってくる。これがアタッチメント対象であり安全基地だ。子どもたち成長するにつれ、親とは異なった安全基地を作ってゆく。保育園の先生、学校の先生、友達、恋人、そして成人すると配偶者などが、新たな安全基地となる。
また、並行して、安定したアタッチメント対象は人が認知する過程の中で心の中に作り上げる対人関係のモデルをつくりあげる。これが他者に対する基本的信頼感や自己に対する肯定感の基盤となり、人の社会・情緒的発達に際した危機からの保護や、危機から立ち直る心の拠り所として役に立つ。
(引用 : 『アタッチメント(愛着)の形成と、保育の役割』平野美沙子 環境と経営 : 静岡産業大学論集 19(2))
・さて、1、2歳児とその養育者との関係に、アタッチメント形成の現れとして「安全基地現象」がみられる(Bowlby, 1969/1982)。安定したアタッチメント関係を養育者と作っている子どもは、養育者から程度な距離に離れて探索し、離れている時間が長くなるか何かに苦痛を感じると、養育者の元に戻ってくる(安全な避難所 ; 寄港できる港)。このように、いわば自立と依存のバランスが取れている乳幼児が、安定したアタッチメント形成をしていると考えられる。成長するにつれ、子どもは養育者から離れられる距離が増してくる。小学校、中学校、高校と、より遠くに探索しては、親の元に戻ってくる。また、子どもたちは、親とは異なったアタッチメント対象(安全基地)を作ってゆく。保育園の先生、学校の先生、友達、恋人、そして成人すると配偶者などが、新たな安全基地となる。並行して、これら安全基地はアタッチメントについての内的表象いわゆるinternal working modelの重要な構成要素として、個体の行動に影響を与えることとなる(Bowlby, 1969/1982)。安定したアタッチメント対象は心の安全基地(表象の中で)となり、他者に対する基本的信頼感や自己に対する肯定感の基盤となり、個体の社会・情緒的発達の保護因子やレジリエンスとなるとされている。
(引用 : 『人間のアタッチメントについて―人間の乳幼児のアタッチメントとその障害―』 青木豊 目白大学 特別講演-こころの安全基地(第22回学術集会 2016. 02))
安全基地とは、いざというとき頼ることができ、守ってもらえる居場所であり、そこを安心の拠り所、心の支えとすることのできる存在である。対人関係において、その人が安心できる人のことである。不安になった時にその不安を話せ、気持ちを受け止めてもらえ、心が温かくなる。そのような人があなたにとっての安全基地だ。何かに挑戦していて辛い思いでつまったとき、その安全基地に頼ることで、気持ちを整理でき、もう一度やってみようと思ったりできる。幼児が不安になったときに、「ママ・パパ」と駆け寄るような相手である。安全基地とは自分という存在が無条件に受け入れられる場所なのである。自分が何を感じ、何を思っているか、安心して話すことができる相手が安全基地になりえる。そのように自分が受け入れられると、自分の人生に対する主体性や責任を得ることができる。自分が自分の心が大切にされることで、自分自身を大切にできるようになるのである。
大人にとっての現実的な安全基地
※当見出しは資料から推定
現実的な「大人の安全基地は、自分と違うものをもって生まれていても、自分と違う環境で育ち、自分と違う営みをしてきていても、自分の気持ちを無条件に受け止めてくれる人」だ。共感とは違う。自分とは違う気持ちを持つ人の存在を認められるかだ。
安全基地をつくるだけではない、愛着障害を克服する方法
また、それを助ける有効な手段が自分の感情を理解する力だ。
安全基地をつくることは克服への第一歩
どんな愛着でも克服方法は変わらない。今ある不安や心配、無力感、苦しみを受け入れてもらえることが克服への第一歩である。あなたが不安・心配、無力感、苦しみといったものでいっぱいだということを、一緒に感じてもらうことが必要である。これをしてくれる人が安全基地なのだ。
安全基地に共感してもらうことで内省力・共感力が身に付く
愛着障害なのは「情動と理性のどちらかに認知の偏りが生じている状態」だからである。認知の偏りを戻すことで愛着障害を克服できる。その認知の偏りを戻すには、「振り返り力」を高める必要がある。振り返り力とは、自分に起きた事実を客観的に受け止め、過剰に反応しない技術力と言い換えることができる。その振り返り力を高めるには、落ち着いた状態となり、自他の感情や思いに気づく能力が必要だ。
安定した愛着の人は、体験したことにしっかり向き合う。その向き合い方も客観的であり、前向きなものになりやすい。心情的な過剰反応をするのではなく、事実を客観的に受け止めることで、事態に冷静に対処することができる。
今の自分の思いや欲求に飲み込まれず、相手の気持ちや自分のふるまいを客観的に見る力である「内省力・共感力」が、振り返る力をもたらす。内省力や共感力は、安全基地に共感的な対応をしてもらうことで身につく。内省力と共感力は背中合わせの能力であると考えられているもので、共感的な対応をしてもらうことが、内省力を育む。つまり、愛着障害の克服は、幼い頃の共感不足を取り戻ることで達成できるのである。
感情に飲み込まれない力を身に付ける
そしてもう一つ、マインドフルネス・瞑想が振り返り力を高めるのに大変役に立つ。呼吸を整えることで、刺激で乱れている頭を整えてクリアにすることがマインドフルネス・瞑想の本質的な価値となる。「頭をクリアにする力」とでも言える。マインドフルネス・瞑想については所要時間や呼吸のタイミングなど様々な方法がある。マインドフルネス教室で学ぶ以外にも、インターネットや書籍でも紹介さており、ご自身にあったやり方を、比較しながら探すことができる。
認知の偏りを戻すためには「振り返り力」を高める必要がある。振り返り力は「内省力・共感力」と「頭をクリアにする力」がもたらすものだ。共感してもらうことで「内省力・共感力」が育まれる。マインドフルネス・瞑想をすることで「頭をクリアにする力」を得ることができる。激しく感情が揺らされる愛着に起因する出来事があった時にも、頭をクリアにし、相手の事情に共感を持ち自身の内省をすることができれば、あなた自身の人生を生きやすいものにすることができる。
それでも大事なことが「あなたの周りの方が安全基地になること」
それでも大事なことが「あなたの周りの方が安全基地になること」だ。内省力・共感力も大事だし、マインドフルネスなどで心を落ち着ける能力も大事だが、安全基地も大事だ。
安全基地は内省力や共感力、心を落ち着ける力を得るサポートとなる。安全基地に頼ることで、それらを持っていなくても体感できるからだ。
「あなたの周りの人が安全基地を持てる」ようなチャンスがあれば掴んで欲しい。
(参考 :『回避性愛着障害~絆が稀薄な人たち~』岡田 尊司 光文社新書 初版)
(参考 : 『愛着障害の克服 「愛着アプローチ」で、人は変われる』岡田 尊司 光文社新書 初版)
(参考 : 『成人アタッチメントのアセスメント-動的-成熟モデルによる談話分析-』著者:パトリシア・M・クリテンデン、アンドレア・ランディーニ 監訳者:三上 謙一 岩崎学術出版社 初版)
どのようなとき安全基地を持っていると言えるのか?
どのようなとき安全基地を持っていると言えるのか。それは、頼ったときに安心感を得ることができたときといえる。自分の気持ちに共感的に応答してくれることが安全基地の重要な要素である。
しかし、安全基地を持たずに大人になったといえる人ほど、安全基地をつくることが難しいといえるだろう。安全基地を持たずに生きるには、自分の気持ちに共感的な応答をしてもらうことを、捨てる必要があるからである。安全基地になるはずだった人に一種の絶望をもったため、安全基地をあきらめたといえる。安全基地をもう一度つくることは、絶望してあきらめたことにもう一度挑戦することなのだ。
(参考 : 『愛着障害の克服 「愛着アプローチ」で、人は変われる』岡田 尊司 光文社新書 初版)
あなたが誰かの安全基地になるには?
※当見出しは資料から推定
愛着障害克服の支援者にできるのは、その人にとっての安全基地になってあげることだ。愛着障害の克服をしてもらうには「愛着アプローチ」を意識した支援が有効である。この愛着アプローチは、愛着を原因とした困りごとを解決するのにも有効である。愛着アプローチとは、愛着障害による諸症状を直接治そうとするのではなく、不安定な愛着自体にアプローチするものだ。
愛着アプローチには2種類ある。「愛着修復的アプローチ」・「愛着安定化アプローチ」だ。愛着修復的アプローチでは不安定な愛着を抱えることとなった元の養育者などとの関係を修復していく。愛着安定化アプローチでは、今その人の周りにいる人やカウンセラー、医師などが安全基地なり、愛着の安定化を図っていくものだ。その人が安全基地を持てるようにし、愛着の安定化を図っていく。安全基地を持てた後、認知の偏りを修正していく。
認知の修正に必要な「内省力・共感力」は、共感的な対応をしてもらう中で身につけることができる。認知の修正には過去の傷を癒すことが求められている。過去の愛着の傷を癒すには、過去の事実を客観的に見ることが必要だが、内省力・共感力がついて初めて達成することができる。
また、認知の偏りを戻すのを手伝う際には、被支援者が情動と理性のどちらに認知の偏りが生じているかを把握しなければならない。情動に偏っているなら論理的思考が見えなくなっている。論理的思考能力の有無に関わらず。理性に偏っているなら感情が見えなくなっている。様子を見ながらになるが、適切な支援を行っていくことが効果的だ。
以上を実現するための指標に「良い安全基地となるための5つの条件」がある。「『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』岡田 尊司 光文社新書」によると、良い安全基地となるには5つの条件がある。以下はその条件を与えられる側から述べたものだ。
・安全感を保証してもらえる。
・感受性(共感性とも)を持ち、そうしてもらえる。
・応答性があり、求めているときに応じてもらえる。
・対応に安定性がある。
・何でも話せる。
不安定型愛着スタイル ・偏向型愛着タイプ を抱えることになったのは、これらを与えてもらえなかったことが大きな原因である。与えてもらえなっかったものを与えてくれる相手が安全基地となりえるのである。最後の「何でも話せる」という条件は他の4つが保証されることで得られるといえる。そうでなければ「何でも話そう」とは思えないのではないだろうか。
(参考 : 『愛着障害の克服 「愛着アプローチ」で、人は変われる』岡田 尊司 光文社新書 初版)
(参考 : 『成人アタッチメントのアセスメント-動的-成熟モデルによる談話分析-』著者:パトリシア・M・クリテンデン、アンドレア・ランディーニ 監訳者:三上 謙一 岩崎学術出版社 初版)
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