誰にでも安全基地がある社会へ

「三種の安全基地」とは?|「誰にでも安全基地がある社会」にするためのもの

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愛着こうは「誰にでも安全基地がある社会」を実現するため、「三種の安全基地」を提案している。

「安全基地」とは?

安全基地とは「心細いとき、そのことを素直に話せて、頼ることができる人のこと。安全基地に頼ると、安心したり、もう一度やってみようと思ったりできる存在」だ。

不安になった時にその不安を話せ、気持ちを受け止めてもらえ、心が温かくなる。そのような人があなたにとっての安全基地だ。何かに挑戦していて辛い思いでつまったとき、その安全基地に頼ることで、気持ちを整理でき、もう一度やってみようと思ったりできる。

安全基地とは心理学の愛着理論からうまれたものだ。その愛着とは「人が生後数ヶ月のあいだに特定の人(母親や父親)との間に結ぶ情愛的な絆」だ。安定したアタッチメント関係を養育者と作っている子どもは、養育者から程度な距離に離れて探索し、離れている時間が長くなったり、何かに苦痛を感じると、安全な避難所として養育者の元に戻ってくる。これがアタッチメント対象であり安全基地だ。子どもたち成長するにつれ、親とは異なった安全基地を作ってゆく。保育園の先生、学校の先生、友達、恋人、そして成人すると配偶者などが、新たな安全基地となる。

また、並行して、安定したアタッチメント対象は人が認知する過程の中で心の中に作り上げる対人関係のモデルをつくりあげる。これが他者に対する基本的信頼感や自己に対する肯定感の基盤となり、人の社会・情緒的発達に際した危機からの保護や、危機から立ち直る心の拠り所として役に立つ。

・愛着とは、アタッチメント(Attachment)と呼ばれ、1969年にボウルビィによって提唱された。ボウルビィは愛着(Attachment)を「人が生後数ヶ月のあいだに特定の人(母親や父親)との間に結ぶ情愛的な絆」と定義している。
(引用 : 『アタッチメント(愛着)の形成と、保育の役割』平野美沙子 環境と経営 : 静岡産業大学論集 19(2))
・さて、1、2歳児とその養育者との関係に、アタッチメント形成の現れとして「安全基地現象」がみられる(Bowlby, 1969/1982)。安定したアタッチメント関係を養育者と作っている子どもは、養育者から程度な距離に離れて探索し、離れている時間が長くなるか何かに苦痛を感じると、養育者の元に戻ってくる(安全な避難所 ; 寄港できる港)。このように、いわば自立と依存のバランスが取れている乳幼児が、安定したアタッチメント形成をしていると考えられる。成長するにつれ、子どもは養育者から離れられる距離が増してくる。小学校、中学校、高校と、より遠くに探索しては、親の元に戻ってくる。また、子どもたちは、親とは異なったアタッチメント対象(安全基地)を作ってゆく。保育園の先生、学校の先生、友達、恋人、そして成人すると配偶者などが、新たな安全基地となる。並行して、これら安全基地はアタッチメントについての内的表象いわゆるinternal working modelの重要な構成要素として、個体の行動に影響を与えることとなる(Bowlby, 1969/1982)。安定したアタッチメント対象は心の安全基地(表象の中で)となり、他者に対する基本的信頼感や自己に対する肯定感の基盤となり、個体の社会・情緒的発達の保護因子やレジリエンスとなるとされている。
(引用 : 『人間のアタッチメントについて―人間の乳幼児のアタッチメントとその障害―』 青木豊 目白大学 特別講演-こころの安全基地(第22回学術集会 2016. 02))

安全基地が必要な理由

安全基地に慰めてもらってきた人は、慰めを求めたり、与えたり、受け取ったりすることを気楽にできるからだ。

安全基地がおらず慰めてもらってこなかった人は、気楽に慰めを求めたり、与えたり、受け取ったりすることができない。しかし、安全基地がいなかった人もその後安全基地に頼ることができる。安全基地がいない環境から安全基地となる人がいる環境に変化すると、いずれ「安全基地に頼っていいんだ、慰めを受け取っていいんだ」と気づく時がくる。

気楽に慰めを求めたり、与えたり、受け取ったりすることができない人が安全基地を望んでいないと安易に判断すべきでない。無理に押し付けるものでもない。安全基地がいなかった人の安全基地になる人にとってこれが難解だ。言葉でなくてもいい、身体的な密着でもいい、目での会話でもいい、その人にとってより慰めを求めやすい方法を一緒に見つけていくべきものだ。

このように、安全基地をより多くの人が持つために安全基地が必要なのだ。安全基地に慰めてもらってきた人は、慰めを求めたり、与えたり、受け取ったりすることを気楽にできる。人は安全基地から慰めてもらうことで、自分も他人の安全基地になることができる。「安全基地に慰めてもらってきた人が他人の安全基地になる」という流れが続くことで、多くの人に安全基地を繋いでいくことができる。

・特にBタイプの人たちは慰めを求めたり、与えたり、受け取ったりすることを気楽にできる。
・純真なBタイプの人たちは安全で支持的な生育歴を持っている一方で、獲得されたBの人たちはいかなる種類の生育歴も持っている可能性がある。
・アタッチメント関係の再構成は心的方略および行動的方略を修正する。または変化させることを含んでいる。不一致を経験することで以前のパターンの限界と他の方略の可能性の両方に気づくことができると、再構成が可能になる。それが成功した場合の結果が、以前のものとは異なる、またはより洗練された新しいパターンである。新しいパターンはよりバランスの取れた自己防衛的視点を反映している「獲得された」バランスの取れた方略かもしれないが、いつもそのような結果が得られるわけではない。成熟することで、以前は脅威であったものがもはや脅威ではないと認識できるようになる場合もある。このために、今度は話し手が一つの自己防衛方略を捨てて、別のものを選ぶことができるようになるのである。したがって、否定的感情を表出してももはや危険な目に遭わないことに気づいたAタイプの青年は両親の不正に対する怒りにとらわれるようになるかもしれない。同様に、両親がいなくても生き抜くことができると気づいたCタイプの青年はアタッチメント関係から距離を取るようになるかもしれない。(これらの過程はどの年齢でも起こり得るが、青年期では特に頻繁である。)いずれにせよ、AとCの両方のパターンが積極的に使用されている場合、知的理解が手続き機能よりも成熟している場合も含めて、話し手はあるパターンから別のパターンへと再構成しているものとして分類することができる。(その過程が完了した時、話し手はその結果の分類へと割り当てられる。)変化の方向はAまたはCからBへということもあり得るし、AからCへ、またはその逆という変化もあり得る。
(引用 : 『成人アタッチメントのアセスメント-動的-成熟モデルによる談話分析-』著者:パトリシア・M・クリテンデン、アンドレア・ランディーニ 監訳者:三上 謙一 岩崎学術出版社 初版)
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「三種の安全基地」とは?

安全基地は人間にとって重要。ただ安全基地を持てていない人が多くいる。人が安全基地を持つために邪魔するものを排除するために、三種の安全基地を社会に用意すべきだ。その三種の安全基地の詳細は「人的安全基地」・「組織的安全基地」・「経済的安全基地」の三種だ。

人的安全基地

「人的安全基地」は安全基地のこと。周りの人の安全基地になれる人は安全基地になってください。

組織的安全基地

組織内での人がその組織の中での対人関係で安全基地をもてるようにするためのものが「組織的安全基地」。さらに、その組織で養育者の立場にある人が安全基地のなり方を学ぶことで、家庭でパートナーや被養育者の安全基地になれるようにする。組織的安全基地によって安全基地の大切さをわかっていただきたい。

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経済的安全基地

それでもカバーしきれない人、安全基地を持つ人でもたまには「安全基地の代理行動」が必要だ。だから働く人が[生活費と貯蓄分と+α]を安定して稼げるべき。稼げている状況を「経済的安全基地」がある状態とする。

「安全基地の代理行動」って何?

「『アタッチメントの観点から非行・犯罪をモデル化する』 工藤晋平・淺田(平野)慎太郎 心理学評論Vol.60, No.2」によると、通常のアタッチメント関係において安心感を得ることができないことの裏返しとなる行動で仮の安心感を得るというモデルが考えられるとしている。

・以上の知見をまとめれば、性犯罪、暴力犯罪、薬物使用といった領域において、それぞれの逸脱行為が単なる社会的な逸脱ではなく、恐れを和らげるためのアタッチメント行動(性犯罪、暴力犯罪)、あるいはアタッチメント対象(薬物)の逸脱であり、それらの座を非行・犯罪が占めているものと理解される。それは、通常のアタッチメント関係において安心感を得ることができないことの裏返しとも言えるだろう。というのは、種々の犯罪の背景に幼少期からの過酷な、あるいは外傷的な養育経験が横たわっているためである。したがって、すべての非行・犯罪に当てはまるものではないとしても、いくつかの領域に関しては、アタッチメントの観点からこれを以下のように定式化することができる。非行・犯罪とは、安心感の欠如に裏打ちされた不適応の一形態であり、経験した恐れをアタッチメント関係において和らげることができないために外在化された、アタッチメント行動に類する、しかし歪曲された機能を有する行為である。しかし歪曲された機能を有する行為である。それは、安心感を得るための破壊的な方略の延長線上にあり、その意味では、非行・犯罪とは問題ではなく解決の試みである。もちろんその解決の試みとしての違法行為が社会と対立するために、真の解決をもたらすことはなく、またそれによってもたらされる安心感が仮のもの(pesudo)でしかないものだとしても。
(引用 : 『アタッチメントの観点から非行・犯罪をモデル化する』 工藤晋平・淺田(平野)慎太郎 心理学評論Vol.60, No.2)

以上を踏まえ、安全基地から安心感を得ることができないとき、その場しのぎで頼る物の摂取や行動が「安全基地の代理行動」とする。

安全基地を持てていないのはあなただけではない

不安定型愛着は増加し、三分の一もの人が抱えている

「『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』岡田 尊司 光文社新書 初版」によると、不安定型愛着を示す人口は全体の「三分の一」にも達するようだ(*1)。

愛着障害はスペクトラム障害であり、程度に差はあれ、愛着障害を抱える人は身近にも多く存在することになる。

・カップルのどちらかが不安定型愛着を抱える確率→50%以上

・三人のうち、一人でも不安定型愛着を抱えている可能性→七割

「『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』岡田 尊司 光文社新書 初版」の著者は、この現状について、書籍内でこのように述べている。

引用 : ”片目を眼帯で覆って車を運転するようなものだと言えるだろう。”

・安定型の愛着を示すのは、およそ三分の二で、残りの三分の一もの子どもが不安定型愛着を示すのである。

・さらに成人でも、三分の一くらいの人が不安定型の愛着スタイルをもち、対人関係において困難を感じやすかったり、不安やうつなどの精神的な問題を抱えやすくなる。

・ご自身が、不安定型愛着を抱えているかもしれないし、恋人や配偶者や同僚がそうであるかもしれない。カップルのどちらかが不安定型愛着を抱える確率は、何と五〇パーセントを超えるのだ! さらに、三人の人がいて、そのうち一人でも不安定型愛着を抱えている可能性は、七割にも達する!

(引用 : 『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』岡田 尊司 光文社新書 初版 ※2011年発行の書籍)

(*1)2011年発行の書籍、調査の詳細は本文に未記載。著者に対するこの記事執筆者の信頼性から引用することにした。

なぜ安全基地を持てないのか?

安全基地を持てないものは安全基地を他人に提供できないからだ。負のループだ。その連鎖が起こっている。ただし、

Ⅶ. 総括と今後に残された課題

確かに、実際に自らが過去に経験した被養育経験が、世代を超えて現在の自分の子に対する養育を規定する確率は相対的に高いと言えるかも知れない。しかし、それはあくまで確率が高いと言うことであり、決して必然的なものではないことを銘記しておく必要がある。愛着に関する内的作業モデルは、単なる過去の被養育経験の写しではない。…(省略)…Bowlbyによれば、そうした状況は、個人が自分の周りに”自ら”作り上げたものでもある。つまり、一旦早期に非組織的で不安定なモデルを形成してしまうと、それに従って外界を認知し、そして外界に働きかけることによって、自ら予測する状況を、それがたとえ自らに不利なものであっても、現に招来してしまう傾向が人間にはある程度備わっているということである。…

(引用 : 『内的作業モデルと愛着の世代間伝達』遠藤利彦 東京大学教育学部紀要)

以上のように限界も主張されている。更なる研究が待たれる。

個人の幸せのためになぜ安全基地がなければならないのか?

個人の幸せと安全基地の確かな関係について、現在研究が進められている。

・この節では、二者関係が個人の精神的健康や幸福度に与える影響を説明する代表的な理論として、ソシオメーター理論(sociometer theory)と成人の愛着理論(adult attachment theory)を取り上げる。ソシオメーター理論があらゆる社会集団を射程としているのに対して、成人の愛着理論は特定の他者との親密な関係に焦点を当てている。こうした相違はあるものの、二つの理論は、所属欲求(need to belong)(trait self-esteem)や愛着スタイル(attachment style)が、二者関係の質、さらには精神的健康や幸福度を規定するという個人レベルの影響プロセスに限定してレビューを行う。

(引用 : 『精神的健康・幸福度をめぐる新たな二者関係理論とその実証方法』 (浜松医科大学)・五十嵐祐(名古屋大学) 日本心理学研究 ※展望論文)

のような主張もされている。よって、人々に不幸をもたらす合成の誤謬解消のため、人的安全基地・組織的安全基地・経済的安全基地の「三種の安全基地」を主張する。

あなたが安全基地を持つために

誰かが誰かの安全基地になるには安全基地を持たなければならず、現状そのような安全基地を持てない人が多い。ならばどうすれば良いか。ならば、安全基地としての振る舞いを「学べる機会・学ぶ必要性」を作るべきだ。その二つを作るのに最適なのが職場だ。職場で周りの人の安全基地になることができると、その職場は格段に働きやすくなる。働く人にとって、長い時間を過ごす職場に安全基地がある状況は好ましいものだ。さらに、職場で身につけた人的安全基地となる技術を家庭で使ってもらえる。パートナーや子どもなどの安全基地になることができるようになる。

より多くの人が安全基地を持つための「三種の安全基地」

より多くの人が安全基地を持つため、ただの安全基地ではなく「三種の安全基地」を広めるべきだ。なぜ安全基地ではなく、「三種の安全基地」なのか。「三種の安全基地」は通常の安全基地に二種を加えているものだが、その二種の安全基地によって安全基地では補いきれない不安を解消するからだ。

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